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2009年4月29日水曜日

移植外科の精神病理

移植外科はなぜ、おかしい人が多いか。フェローによると、46時中当直・呼び出しで働きづめの移植外科フェロー生活の中で、多くの医者が精神病理を来すらしい。たしかに、科の移植外科医たちをみると、それぞれに様々な精神病理を呈している。

2009年4月21日火曜日

子供の選択権

CFなどの病気だと、子供をいかにして治療に対して前向きな精神状態にするかが、子供のhappinessだけではなく、生存にも響いてくる。だから、子供にも子供なりの選択権を与えなければならない。その際、「Do you want this treatment?」という感じではなく、「Do you want to go to this hospital or that hospital for your treatment?」とか、「Do you want to go on Monday, or Tuesday?」とか、選択肢をうまく絞り込むことが重要だという。

つまり、寒い日に子供に上着を着せるのに、「青いジャンパーがいい?それとも緑色のにする?」といった感じでだまし込むのと、同じ手筋。「いやだ、ジャンパーなんて着ない!」という選択肢を、与えないのだ。

2009年4月5日日曜日

工学的な脳科学観・医学観

By a sort of comic and awful analogy, our current cognitive neurology and psychology resemble nothing so much as poor Dr P.! We need the concrete and real, as he did; and we fail to see this, as he failed to see it. Our cognitive sciences are themselves suffering from an agnosia essentially similar to Dr P.'s. Dr P. may therefore serve as a warning and parable--of what happens to a science which eschews the judgmental, the particular, the personal, and becomes entirely abstract and computational.
-----Oliver Sacks "The Man who Mistook his Wife for a Hat and Other Clinical Tales

理性主義はすべての分解産物を独立とみるが、実をいうとそうとは限らない。生き物なんていうのは往々にして、もっとグチャグチャに混ざったものである。医学には特に、ある疾患の「患者像」みたいな総体を大切にする伝統があったはずである。でもいまや、診断所見のOdds比などが、流行っていたりする。独立でない事象のOdds比をいくら掛け合わせても確度が高まるとは限らないのに。

脳という一番グチャグチャの臓器を相手にしている神経内科・精神科などには、まだ、この全体観を大切にする流れがかろうじて残っているのかもしれない。

2008年11月3日月曜日

テーブルを囲んで

(挙げ忘れていた記事です、書き足すつもりだったのですが)

ここの精神科では、指導医は一応「Dr.○○」と呼んでいる。でも、みんなでテーブルを囲んで患者に関して話し合ているので、それ以外はヒエラルキーはほとんど感じられない。

放射線科では液晶画面を囲んで半円形だったので、これはトリエント・ミサの感じか?精神科は2次ヴァチカン公会議以降。

2008年9月29日月曜日

治る病気とConsumptionと

今日の学部生の症例検討会は、アフリカ帰りに謎の高熱と喀血のある患者について、4年生AIが発表した。昨日入院したばかりで、まだ診断は下っていないというもの検査結果も現在形でどんどん更新されていて、エキサイティングであった。結果はきっと、熱帯病かなにかによって誘発されたSLEの発症がもっとも可能性が高い、ということになった。

で検討会のとりまとめをしていたrheumatologistの先生によると、その昔、不治の病で喀血のあるものはすべて、consumption(結核)ということになっていたそうだ。癌だろうが、SLEみたいなのだろうが、本当の結核だろうが。「半世紀前だったら、この検討会は10秒で終わっていたかもしれないね、肺結核・不治、ということで。」

将来、精神疾患などについても、同じようにいわれるときがくるのであろうか?

2008年9月23日火曜日

カルテ研究の難題

保険が降りるように相当幅を持って診断などは記載されていたり。これではカルテ研究にはならない。

If you haven't been sued, you will

ある朝、カルテ記載の略語に関するミニ講義後、指導医いわく。「まだ医療過誤訴訟を起こされていなければね、そのうち回ってくるから」

Suicide by cop

警察官を挑発して、射殺される、という自殺方法。

2008年9月22日月曜日

LibriumとLithium

(著注:本ブログは多分に脚色を含み、詳細は、現実の症例やできごととは対応しない。)

精神科志望のAI(4年生インターン)。大手柄であった。

重度のアルコール依存症で、withdrawalで入ってきた患者だが、本来は内科に入院すべきなのに、他の合併精神疾患で精神科入院病棟の常連さんなので、ERは精神科病棟に送ってきた。アルコールのwithdrawalは、場合によっては致死性である。

で、AIが何度掛け合っても、指導医同士で掛け合っても、内科はコンサルトだけして、引き取ろうとはしない。「そんなにたいしたことはない。Librium(chlordiazepoxide)をやっとけば大丈夫。」の一本やり。通常量の倍近いLibriumでやっと症状が治まっているにもかかわらず。コンサルトもお粗末で、カルテでLibriumとLithiumを書き間違えたり(いや確かに、Lithiumも服用しているのだが)、ひどいものだった。

3日目。多分何もでないけれど、と、念のためにAIが血液検査を取ったら、入院時は正常であったALT/ASTが800。内科であわてて引き取っていった。毎日患者を見ているこっちのチームのほうが、重篤度についてはよく判断できるに決まっているのだが、この内科チームはきっと、精神科を医者とは見ていないのだろう。

その後、コンピュータで毎日その患者の予後を見守っていたのだが、原因不明の肝機能障害で酵素はさらにうなぎのぼり。内科の言うとおりLibriumを処方して退院させていたら、大変なことになっていただろう。

来年の今頃、これほどにまで、患者のケアについて貢献できているのだろうか。

Is Ms. B a Mouse?

チームのAI(4年生インターン)。一生懸命患者の治療に関連した科学論文を調べてきたのだが、「is Ms.B a mouse?」と一蹴されてしまった。指導医は冗談で言ったのだが、ことの本質を実についている。特に脳はそうだが、他の臓器についても実は、同じことが言える。

あと、指導医が言うには、「糖尿病の基準などと、DSMの精神病の基準は、基本的には同じこと。治療方針を決める上で、ある線を引いて患者を分類しなければならないのだが、その基準である。ただDSMの場合は評価基準が主観的になるだけで、本質的な相対性については内科の診断基準と大差ない」

確かに検査とかも病院やとる人の出来不出来によって変わってくることも考え合わせると、そのとおりではある。

2008年9月19日金曜日

精神科入院病棟 最終日

チーフレジデントが、ベーグルとコーヒーを買ってきて、病棟チームみんなで朝の引き継ぎ前に朝食パーティー。とっても充実した一ヶ月であったし、色々学ぶことができた。また、教室で精神科の授業を受けるのと違い、目の前に患者がいて、薬を出したりしていて、やっと精神科では何をやっているのか、わかってきた気がする。その意味では、学習目標達成といってよかろう。あとは、試験。

2008年9月17日水曜日

Personality disorders

患者と接することの多い病棟スタッフは、瞬時にpersonality disorderやtraitを診断することができる。きっと町中を歩いていても、そんなことがいつも頭をよぎったりするのではないだろうか。

だから学生とかも瞬間的に好かれたり嫌われたりするのだろうか。

2008年9月16日火曜日

Self-pleasure mode

On callのポケベルは、一番うるさい着信音に設定してある。ある忙しい日に、鳴り続けていてとうとう頭にきたレジデントが、チーフレジデントに向かって、「これ、いつもうるさいわよね。ねえ、self-pleasure modeに変えちゃだめ?」だって。ヴァイブ設定のこと... 精神科の入院病棟チームは今、完全に男一人なので、時々、まるで女子校の教室にぽつりと一人座っているような気分になる。

あと、いろいろなポケベルのメロディーにそれぞれ、お下品な替え歌があるらしい。内科のインターンでポケベルに追われて当直をしていると、そういう替え歌が頭に浮かぶのだそうだ。

ニューヨークあたりはいま...

アメリカ経済(国際経済?)は倒壊の瀬戸際をうろうろしているが、今日病棟で投資銀行の人たちが話題になった。

「あら、大学の同級生でもいたわ、投資銀行に勤めるんだといって浮かれていた人。」
「今頃になってみんな首だわ~!」
「医者は10年近くもトレーニングが必要な割には給料も高くないし、勤務も厳しいけれど、職業の安定としてはやっぱり一番かもしれないわね。」
「今頃、ニューヨークあたりの精神科はこれから大変じゃないかしら?Lehmanとかに勤めていたnarcissistたちがみんな一斉に鬱とかになるでしょうから。」

これ、このままいくと、ニューヨークに限った問題で収まるかは、まったく不明ではあるが。

そういえば、時事的な発症とか、時期的な発症とかはよくあるみたい。たとえば僕らの精神科の一ヶ月はちょうど8月末から9月末で、ちょうど新学期にあたった。だから、躁のfirst breakの症例もいくつか見ることができた。あと、開業精神科医は8月あたりに休暇をとることが多く、普段の精神科治療が途切れてしまったことから悪化して入院する患者も何人か、いた。

FD12

常連患者。極端な人格障害で、地域中の精神科病棟を遍歴して暮らしている、という意味では悲劇的でもある。「テディーベア兆候」陽性(人格障害に伴う子供帰りというか、人格形成不全というか)。もう何10回も入院していて、前回は二ヶ月近く居座ったという。Suicidal ideationさえ示せば、いつまでも居座れることを知っている。もっとも、すでに何回も相当深刻な自殺未遂を行っているので、冗談とばかりにはいかない。

でもさすがに病棟のルールを取り締まろうとするスタッフを蹴ったり、相手にしてもらえないからと朝から晩まで阿鼻叫喚して病棟のほかの患者の精神衛生を乱したりすると、チーフレジデントが黙ってはいない。容赦なく、あっけなく、FD12という強制入院手続きを済ませて、securityの守衛さんたちによって担架に括り付けられて、haldolを打たれて、地域の精神科強制入院病棟を有する病院に送られていった。

チーフレジデントによると、ありとあらゆる境界性人格のなかでも、もっともひどいという。日がな大声で嗚咽が聞こえてくるのは、いかにも「精神科入院病棟」といった1日半ではあったが、病棟中みんなぴりぴりしていて、いやだった。

納豆

納豆の朝食はおいしくて体にもよいが、ちょっと控えた方がよさそうだ。今日は一日中、朝の歯磨きにもかかわらず、口から枯草菌のにおいが。一生懸命ガムを噛んだり、うがいをしたりしていたのだが、口に納豆味ガムの感覚が残る。

2008年9月13日土曜日

Asshole NOS

ある患者の退院書類を準備していて、レジデントに、最終診断は何にしましょう、と聞いたら、「Asshole NOS」だって。ワッハッハ。(NOS=not otherwise specified、DSM分類の中で、たとえば診断のはっきりしない情緒障害は、mood disorder NOSなどとなる)

本当に今週はしんどかった。この患者、悪性の覚醒剤の長期乱用で、脳はきっとどろどろに溶けているのだ。でも、人間というのは恐ろしいもので、一見するとふつうに振る舞えるのだ。じっくり込み入った話を聞き出してはじめて、妄想などの酷さがわかる。あと、回診の時は必ず、30秒以内に泣き出す。あまり科学的ではないとらえ方をすると、大脳による制御が解けて、動物的な原初感情があらわになっているのかもしれない。

で、チーム全体で一生懸命よかれとしていることも、あまり受け入れない。覚醒剤で頭どろどろのくせに、出した薬は「頭がおかしくなるから」と拒む。確かに向精神薬はある意味、怖い部分もあるのだが、薬というのは一般的にどれも怖いわけで、それを承知の上で、何もしないよりはよっぽどましだから、と出しているのだ。もうしばらく安定させてからの退院、という予定だったのだが、AMA(against medical advice医者の勧めに反しての退院)で出て行くという。まあ、voluntaryの病棟なので、強制的に入院を継続させたり、ベッドに縛り付けたりするようなことは、しない(できない)のだ。

完全に頭をやられているならいざ知らず、時々、健常に見えるだけに、僕のようなナイーヴな医学生は頭と気持ちを撹乱されて、しんどいのかもしれない。

でなんとか、物質依存の治療施設を紹介して、たぶん処方した薬についてもその重要性をわかってもらえた気はするのだが(気の遠くなるほどの回数、説得した挙げ句)、できる限りのことはした今となってはもう、悪いけれど、さっさと出て行ってほしい。本当はこういう患者じゃなくて、愉快な躁患者とかを、受け持ちたいのだ。

Passive Death Wishはおあり?

朝の引き継ぎで、レジデント・看護師・学生が集まって話しているところに、病棟の経理係のオバチャンがきた。入院患者の一人について、保険屋が払わないと言いだしたらしい。

アメリカの崩壊した医療保険システムでは、病院から健康保険会社に対して請求した医療費が、すべて帰ってくるとは限らない。保険屋によっては、勝手に値引きしたり、これとこれは払わない、などと勝手なことを言い出す。まあ、民間の保険会社は商売なのだから、重病人には死んでもらうのが一番いいに決まっているのだが、商売ではなく医療に携わる病院側としては、そういうわけにもいかない。特に精神科については、偏見が根強いようで、保険交渉も一般病棟とは別だったりして、支払い率が低いようだ。

だから、経理のおばちゃんによると、「カルテを書くときは、もしも物質依存とそのほかの精神疾患が合併している場合は、かならず一番目の診断は精神疾患の方にしてくださいね」だって。物質依存は、分裂病や鬱や躁鬱などに比べ、一段と蔑視の度合いが高いのだという。

「あと、できることなら、passive death wish(求死願望とでもいうのか?自殺するほどではないけれど、事故か病気か何かで死んでしまえばいいのにな~と思うこと。)も聞き出せると最高ですわ」と。もちろん冗談。みんなでワッハッハ。でも、日がな保険会社とfightしていると、そんな冗談の一つもいいたくなるのだろう。

2008年9月10日水曜日

Physical examinationビデオ講義

早くも後1.5週間で精神科は終わり。次なる関門は、3ヶ月の内科。Georgetown入院病棟で1ヶ月、地域の医院で外来1ヶ月、関連病院の入院病棟で1ヶ月。

精神科から救急に送られて、ざっと診察するだけでもあたふたしているのに、このままだと内科はヤバイ。第一、聴診器とかそういう授業はM2でやったが、もう、5年近く前の話。で、Georgetownの内科は特に診察に関しては厳しいといわれる。そこら辺、何とかしなくてはならない。



ちょっと前に知ったのだが、便利なことに、Physical Diagnosisの手ほどきビデオが無料で視聴できる。ごく普通のphysical diagnosisの講義だが、復習にちょうどよい。あと日本の学生の方は、留学の際に特にこういうのが参考になるのかもしれない。

あと、医学部で学んだことのない方は、解剖のビデオとかもあるので、おもしろいと感じる方もあるかもしれない。ただ、あの臭いと、人体がモノとなった触感は、なかなかビデオでは伝わらないのではあるが。

2008年9月9日火曜日

怖い話

今日は指導医が急な外来か何かで遅れる、というので、朝のシフト交代から10時頃まで暇だった。ので、チームみんなで食堂にいってゆっくり朝食をした。

で、ちょっと変な病歴の患者が入ってきていたので、そこから発展して、いろいろとおもしろい話を聞くことができた。チーフレジデントが、こういう話、とっても好きなのだ。ビール瓶を飲み込んだ患者の話や、膣部にナイフを挿入して自殺を図った患者や、trazodone(Desyrel)による持続勃起症によって救急に運ばれた患者(海面体へ、epinephrine注射?!)の話や、経尿道的な性交の話になった。

この経尿道的な性交、もちろん異常性癖ではあるが、同性愛男性に時々みられるらしい。解剖学的に考えて、どうしたらそんなことができるのかはちょっと不明だが(「うん、きっと、Foleyの延長なんでしょ。首長族とかみたいに、少しずつだと思うわ」)、尿路感染症・尿失禁など、大変なことになりそうだ。で、チーフレジデント以下、僕以外全員女性なので、それに関するジョークはちょっとキツかった。精神科にいると、変な行動をいろいろみる、というのと、冗談でも言っていないとこっちのバランス感覚がおかしくなってしまう、という面もあるだろう。

そういえば、チーフレジデントは今日チーム全体をさして、間違えて、「ladies」だって。もちろん、普通に「guys」とかいうのも本来は男性なわけだが、現在では中性用法も一般化している。それを考えると、女性の方が多いので「ladies」でもよいのだろうけれど、まあチーフレジデントは僕と目をあわせるなり、慌てて「and gentlemen」と付け加えた。