ラベル Transplant の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Transplant の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2009年6月17日水曜日

...she passed at three o'clock...

夜、帰りがけに、一般外科ICU病棟にふらっと立ち寄った。別に強い目的意識があったわけでもないが、ある患者の容態が気になって。この患者は、産婦人科、移植外科、脳外科と3ローテーション・4ヶ月にわたって、間断的に受け持っていた。空っぽの部屋を指さしたら、看護婦さんが、「あら、3時にお亡くなりになったんですよ。」と。まあ、最後だけは静かに息を引き取ったとのこと。

でもいろいろな指導医の判断をみていると、体制に対する猜疑心というか、疑問が発展してきた。その成長も、この患者さんがきっかけ。結局医者というのは本当に患者のためを思っているのか、という点に尽きる。不幸にして、答えがNoであることが、あまりに多いのだ、特に外科医。

2009年5月16日土曜日

He has no idea what he's doing...

移植臓器の採取というのは、実に不思議な現場である。

まず時間帯。日中に家族への告知などが行われるため、臓器の採取は通常、夜間~深夜にずれ込む。

そして顔ぶれ。臓器は患者ごとに優先順位により割り振られるので、基本的には臓器の当たった患者が治療を受けている病院が、臓器採取現場に出向く。通常は一献体あたり、肝臓、腎臓、と場合によって肺・心臓・膵臓・腸管などが、別々の患者に移植されるから、脳死者の出た病院には、一帯の移植センターから、複数の移植チームが集合するのだ。

そして手順。要するに、脳死者の血流を一気に冷たい細胞内溶液のような組成の環流液で置換して、一気に体をシャットダウンする。実験動物の血流を固定液で環流する手順と、ほとんど代わりがないので、最初の採取に出向いたときなどは、妙に既視感があった。対象がヒトである(ヒトであった?)という違いを除いては。あと、固定液による筋硬直が起きないので、術野だけに注目していて心臓などのモニターに注意を払わないと、何が起きたのか、にわかにはわからない。



先日の採取は、ニューヨークの有名病院から心臓を取りに来ていた。ほかの臓器チームは移植フェローや勤務医が来ているというのに、その有名病院だけ、何年目だかわからないレジデントが来た。しかも、移植なんて普通、医学生はオマケの見学retractorなのだが、そのニューヨークのチーム、なんと医学生が前立ちで心臓を摘出しようというのだ。その時点からして回りは不審な眼差しなのだし、しかもその研修医、いかにも手際が悪い。全く何をすべきかわかってはいるようだが、いかにも見ていて手慣れない。

で、回りの眼差しを感じ始めたら、そのレジデント、緊張してきたみたいでさらに手が震え出す。挙げ句の果てに、うちの移植フェローが肝臓の準備と環流の準備を全て終えても、まだなにやら心膜だかと格闘している。(心臓は解剖学的には比較的独立している。また心臓外科はスピードが特に重要なので、普通心臓をさわる人は上手で速い。だから肝臓よりも心臓の方が手こずるなんてことは、通常、あり得ない。)

で環流の準備が全て整った時点で、「待ってくれ」と言い出す。どうやら、ニューヨークの病院で、臓器受け入れ患者の準備ができていないらしい。確かに心臓は虚血時間に一番弱いので(4時間とか?)、特に飛行機で来ていたりするとそこら辺の手はずは最重要である。が、ここまできて、回りは「こいつ何者ぞ」という不審感があるし、回りの年長者に対して緊張感からか虚勢を張って、空回りをしている。

しかも、時は朝の4時半。環流時間を5時半まで待ってくれ、というのだが、ほかの人たちにだって都合はある。ただでさえ朝の通常オペは中止だというのに、勝手な準備不足で1時間も何もせずに待てというのは、あまりに理不尽。しかも、ワシントンのラッシュを、全く考慮に入れていない。5時にこの病院を出たら、郊外の空港には間違いなく6時前につける。6時にてたら、どう転んでも7時半どころの騒ぎではない。交通渋滞の中で、せっかくの心臓が死んでしまうこと必死である。このラッシュ事情を、一番年長のコージネーターの移植医が説明するも、レジデント君、飲み込みが悪い。全ては自分の思い通りに行くのだという先入観がある様子。

まあとにかく、採取は無事終わった。心臓から最初に採取するのだが、そのニューヨークの心臓チームがオペを出て臓器の採取の危急な局面が終わるや、すぐに他のチームから、ボソッ、ボソッと、とんでもない悪口雑言が漏れ出したことは、いうまでもない。

2009年5月7日木曜日

NPO since midnight

手術前の患者さんは絶食。患者さんの手術が午後に延びてしまって、「おなかすいた」と訴えることがある。

でも、外科を回っている医学生というのも、忙しく駆け回っていてずっと絶食だったりする。たとえば今日なんかは寝坊して、コーヒー一杯で病院に出て回診前の準備をして、そのまま朝の8時からずっと手術に入っていた。生体腎移植のドナー側摘出で本当は昼くらいには終わる予定だったのが、内臓脂肪が大変だったのと、以前の婦人科関連の手術の影響でadhesionがすごく、結局午後4時まで続いてしまった。

まあ、何も食べていなくても、意外と平気なものだ。

2009年5月4日月曜日

胆石

小腸移植の最後に、「ああそうだ」という感じでcholecystectomyをした。

移植外科の指導医が主にやったのだが、明らかにcholecystectomyは久しぶりと見えて、しかもこのattendingは途中でフラストレーションをためてしまうような人なので、最後はやけっぱちの乱暴。動脈をligateする前に胆嚢を肝臓からはがし始めるものだから、出血が中々止まらず、さらにフラストレーション(胆嚢は静脈がなく、proximal liverにdrainするわけ)。あまりよく見えないところにやけくそのように自動クリップをたくさん放り込む。そんなに乱暴にやって、間違えてright hepaticとか結んじゃったりしやしないか、と冷や冷やもの。ああでも、そうしたら、切り取ればいいのかな。あるいは今度は、肝移植すればいいだけか?冗談じゃない。

まあ確かに、小腸の血管anastomosesに気を遣ってあまりretractしなかったからfieldが今ひとつ、というのもあるのだろうけれども、それならそれで移植前に胆嚢をやればいいようなもの。こういう計画性のなさとフラストレーションによる乱暴さは、名人とはとてもいえない。そういえばこの指導医は、bedside mannerも最悪である。

まあでも、指導医が勝手にtemper tantrumを起こしている横で、じっくりと皿に取り出された胆嚢標本と胆石をいじくり回すことができたのは、良かった。確かに、堅いし、形状もNetter図譜の通りだ。割ると、何とか割れないこともないが、総じて、小動物の糞を黄緑色のmucoid油に浸したような触感。夜中に関連病院で行った小腸harvestから10時間近くほとんど立ちっぱなしだったので、最後のclosureのあたりとかあまり覚えていないが、胆石だけは、一生忘れまい。

2009年5月3日日曜日

Pimpee道の極意

だいぶ、pimpを受けるのも上手くなってきた。今日の休日回診では、指導医とのKabuki danceが我ながら上手く壺にはまったので、日記す。(アメリカでは型に嵌った所作を、Kabuki danceと呼ぶ)。



中年女性、総胆管嚢胞摘出後2年目(現在ローテーションしている移植外科は、部長先生がhepatobiliaryも時々やっている。)原因不明の1ヶ月にわたる右下腹部痛で、緩急はあるものの全体的に徐々に悪化しており、時として下痢を伴う。CTは盲腸から上行結腸に渡って、炎症反応陽性。白血球など、ちょっと高め。IBDの類については、スコープ含め陰性と診断されたばかりである。PSHはappendectomyだけ。

そこでいろいろな鑑別のdiscussionとなった。(ちなみに今日のattendingは移植外科で唯一、真人間。人がいいルイジアナのおっちゃんで、やたら外科史についてpimpするのが大好き。)

指導医
「Can a patient get appendicitis after appendectomy?」
(このleading questionの答えは当然「yes」なのだが、そう答えればいい、というものではない。指導医の意図は、appendectomy後でも場合によっては取り残しの部分中心に感染する可能性はある、という点を強調したいのだ。簡単に「yes」といってしまっては、pimpの腰を折ってしまう。)

K
「I would think that's HIGHLY unlikely.」
(↑このあたりがpimpee道の極意。正しい答えでありながら、指導医の意図を汲んでpimpの流れを阻まない。)

指導医
「Well, it does actually happen. I had a patient once... (一頻り、思い出話). OK, then what do you call inflammation of the cecum independent of the appendix?」
(↑Pimpの流れには起承転結があるのだが、思い出話だけではうまく一連の話がまとまらないので、最後に切り返し。)

K
「typhlitis」(運良くすぐ答えが口をついてでてきた)

指導医
「Good. And how would you treat?」

K
「Well, she isn't acute or immunosuppressed, we could just try her on some Flagyl.」
(↑きちんと、移植外科医なりの結びにつなげられるよう、誘導してあげなければならない。)

指導医
「OK, that's a reasonable thought. But you raise a good point, typhlitis is a serious problem in immunosuppressed... 云々」

2009年5月2日土曜日

Splatterの一日

一昨日は、朝6時に病院に行って、翌日の午後2時に帰るまで、3回、スプラッターの被害に遭ってしまった。

1回目はJackson-Pratt(術後の切開創から滲出液などを吸引する、drainの一種)の抜去時。インターンから抜くようにいわれた際、「飛び散らないようにしっかりガーゼで押さえるのを、忘れないようにね」と注意されていたのを、もう何度もやっているものだからハイハイと聞き流して油断していた。Scrubsと白衣に血潮が飛んで(血というよりはserosanguinousなのだが、その方が意外と色は鮮やか)、朝っぱらから着替え。あとで、インターンに会って報告したら「だからいわんこっちゃない」とばかりに笑われた。まあ、二度と同じ間違いは繰り返さないだろう。

2回目は臓器採取のドナー。大動脈カテーテル挿入の際に、派手に飛んだのに当たってしまった。心臓チーム2人肝臓チーム3人の計5人目、患者の一番足下の方に立っていたのだが、小腸を横に押さえていたので顔がちょっと中央の方に出ていて、運悪くそこまで飛んだ。マスクから首筋までスプラッタ、ガウンの正面は結構派手に染まった。しかも採取先の病院のORは安っぽいガウンしかおいておらず、しかもオペ看護婦が不慣れで首筋を緩くしめられたもので、首筋は直接当たってしまった。まあとりあえず、オペ看護婦にアルコール綿で拭いてもらって、続行。この病院はオペに全面face shield入りのマスクがおいていなかったので、もしももう少し派手に飛んでいたら、マスクを超えて鼻や眼鏡にも飛ぶところだった。

まあ臓器提供のドナーというのはいろいろ検査を受けていて、HIVとかウイルス肝炎はないし、別にこちらも傷口はないので全く心配ないのだが、それにしてもこういうときに、伊達めがねをしていてよかった、と思うのだ。術後着替えていたら、首筋からscrubsの中を、胸まで滴っていたようだ。疲労のあまり(当直中の未明であった)あまり気にはならなかったが、今から思うとあまり気持ちの良いようなものではない。まあ、丁寧に拭き取った。きっと、ラットのスプラッタに当たりすぎていて、感覚が麻痺しているのだろう。あと、解剖実習の時にはマスクとかちゃんとしないから、飛散した肉片が口に入ったこともあった。あれはさすがに気持ち悪かった。

3回目は採取した臓器の移植。朝の7時で、24時間仮眠だけで走り回っているのでもうフラフラ。よけたのに、完全にはよけきれなかった。門脈の再吻合の際にガウンの正面に当たってしまった。まあこれは、大学病院のちゃんとしたガウンで装備していたし、あたったのは胸より下のガウンだけだったので、たいしたことはない。でも、HIV患者だから、怖いといえば怖い。門脈というのは静脈のくせに、結構、血が入っていたりする。

He's in to bump his transplant status...

臓器移植が通常の高度医療の一環に組み込まれている現在、移植臓器不足はとても深刻で、多くの患者が臓器待ちの状態で死亡している。

移植臓器は、生体移植をのぞいては、全国ネットワークを通して提供されている。ドナーがお亡くなりになると、全国ネットワークの登録リストで、優先順位・待ち時間に応じて各臓器が割り振られ、臓器が当たった患者の移植チームが、車や飛行機などに乗って、死亡病院に出向いて臓器を回収する。(全国は何エリアかに分けられており、ワシントンDCの場合は通常、東海岸の中部に限られる)

そこで、移植リストの優先順位を高めようと、いろいろな画策が行われるわけだ。

たとえば、現行の小児肝臓移植リスト基準では、事実上、輸血を受けると、一番高いグレードに格上げされる。そこで、移植リスト対策の輸血入院が、全国で行われているのだそうだ。フェローによると、次の移植基準委員会できっとこのloopholeは改正されるだろうとの話だが、人間は必死になると、いろいろな抜け道を思いつくものだ。

2009年4月30日木曜日

生体腎移植

クランプを外すと、パッと生き返るのは、感動的だ。

で、今日はback tableを手伝いながら、移植臓器の保存液についてpimpされたが、脳研究の生切片の実験をたくさんやっていた頃に色々と調べてあったので、ばっちりであった。もっとも脳科学の生切片は生きていることよりは記録しやすいことが優先なので、最初の1時間くらいで選択的に弱い細胞を殺して、都合のいい切片に作り替えることが、むしろ溶液組成などの目的ではないかと思われる節がある。

いきながらえてもらわないと困る人体の臓器には、細胞内のイオン組成に擬した氷冷液を用いる。で、高カリウムなので、体循環に戻してやったときに注意が必要だ。

2009年4月29日水曜日

移植外科の精神病理

移植外科はなぜ、おかしい人が多いか。フェローによると、46時中当直・呼び出しで働きづめの移植外科フェロー生活の中で、多くの医者が精神病理を来すらしい。たしかに、科の移植外科医たちをみると、それぞれに様々な精神病理を呈している。

2009年4月27日月曜日

アルデンテと茹ですぎ

今日は移植小腸の拒絶疑い患者を、緊急内視鏡に連れて行った。拒絶の病理グレードによって、どこまで強力な免疫抑制を行うかが、決まってくる。

システムの都合上、生検を緊急に確実に読みたいとなると、物理的に人がいて標本を病理部に直接搬送すると1~2時間、削れたりする。午後だったりすると、この1~2時間が大きな違いをもたらしかねない。たとえ緊急標本でも、搬送や事務のいろいろなステージで遅れが生じうるのだ。だから、病棟チームがついて行って、内視鏡からとれた標本を物理的に病理の鼻の下に突きつけることになった、こういうscut(使いっ走り)の局面で、医学生がもっとも有用なのである。

でこの患者さんは大腸が狭窄していて、結局小児用の内視鏡を使うことになった。小児スコープの方が直径が若干だが小さい、では、成人もなぜ、小児スコープを使わないのか?画像などもそう違わないようだし、お尻から入れるものは小さいに越したことはない。

で、消化器内科の先生に聞いたら、太い方が操作が楽なのだそうだ。アルデンテとノビノビの茹ですぎのちがいなのだ、という。人によっては成人もすべて、小児スコープを入れる人も、いるらしい。

2009年4月25日土曜日

When I get a new kidney...

わかっていない。新しい腎臓を入れたって、別に振り出しに戻るわけではないことを。うまく臓器が機能したとして、腎臓病と免疫抑制とをすり替えたに過ぎない。寿命は延びても、また20歳に戻るわけではないのですよ。本来の平均寿命に戻るわけですら、ない。

生体肝移植

意外と、技術的には、たいしたことなさそうだ。結構原始的な手術であった。まあ、ネズミを相手にやっているときとは違い、失敗は許されないわけだろうけれども。

でも実際に切っている人たちよりは、コーディネーターとか、オペ看護婦とか、病棟で術後管理を取り仕切っているフェローとか、裏方の方がよっぽど大変なのではないかという気すらする。

しかし、子供に身を供する母親、というのは、そういうものなのだろう。

2009年4月22日水曜日

The Unit

「The Unit」。

病院を回り始めた頃、これがICU(集中治療病棟)のことであることに気づくのに、しばらくかかった。一般病棟は通常「floor」や「ward」と呼ばれる。

移植外科にいると、外科ICUにも患者が多い。「I'm going to the unit」という台詞もよく聞かれる。あと、「さっきunitにいったらcodeをやっていて、...」「誰が死んだの?死ぬの?」なんていう会話も。そう、心肺蘇生なんていうのは、半分死んだようなものなのだ。

2009年4月20日月曜日

臓器採取

先ほど(21:05)、臓器ドナーがPhiladelphiaにて生じた(お亡くなり)との通報がポケベルに入った。22時集合で採取にいくという。一緒に移植外科を回っているPhiladelphia出身の女の子と電話で相談の上、彼女が遠足で行ってくることになった。おそらくヘリコプター。いきたい気もするが、彼女の実家だし、とてもいきたがっているので譲ることにした。

本当は火曜が講義の指定日なので、月曜は学生は当直をしてはならない、という決まりになっているのだが、まあ、こんな機会は滅多にないということで。彼女はおそらく未明に戻ってきて、朝方まで臓器移植手術に立ち会うことになるだろう。おみやげ話が楽しみだ。