2009年7月15日水曜日

採血

アメリカの医師は、通常は採血など、しない。病院では看護婦や採血技師がやるし、診療所では検査部または外部の検査機関への斡旋となる。でも研修医の時には、夜中とかに看護婦がとれなかったりした場合に、呼ばれたりする。熟練看護婦ができない採血を普段練習していない研修医ができる、というのは、これは基本的にはクレージーである。

まあそれはそうと、研究の現場ではいろいろできた方がよいわけで、動物の採血をしなければならないこともあるだろうし、第一秋には「研修医研修(acting internship, sub-internship)」と称してほとんどインターンの仕事をする月が2ヶ月も入っているので、採血くらいは上手な方がよい。

で、昨日はクリニックの検査部で採血を練習させてもらった。採血なんてきっと、MS-2年生のころの5年前以来であろう。まあみな健康な人ばかりで簡単は簡単、暈人だから泰然自若のひとがほとんどなのだが、中にはこわいひとも。あと、ある人なんかは、ジョークだったのだが、こちらの緊張状態を見抜いてか「I'm carrying a gun, you know」といって笑っていた。まあでも、「projecting confidence」というのか、まあつまりは翻訳すると「はったり」とかいうやつだが、芝居はだいぶうまくなった気がする。

2009年7月13日月曜日

Shit

今日もまた直腸鏡、クローン病関連の痔瘻。結構派手な炎症というか肉芽腫というかで、覗いた大先生は聞こえるか聞こえないかの声でひとこと「shit」。まあ、「クソ」というわけだが、直腸鏡をのぞいているので、たしかにliterallyに「糞」である。つい、吹き出しそうになってしまった。患者が向こうを向いて伏せていたのが幸い。

2009年7月7日火曜日

直腸鏡

カルテを打ち込んでいたら、消化器内科医でもある大差先生が寄ってきて、「ちょっとおいで」と。クリニックの処置室に連れられていくと、「こちらDr. Takagaki、今日は彼が直腸検査をしますからね。」まあ、若干詐欺混じりだが、確かにドクターはドクターなので、間違いはない。

俯せになっている患者を尻目(?)に触診からはじめて、身振り手振りによってあっけなく、はじめての直腸検査ができてしまった。以前から不思議に思っていたのだが、確かにこれだったら19世紀技術で十分可能である。大腸ガンは出口直前に発生することも多いのだが、体感してみて初めて検査の意味がわかった気がする。医学というのはこういう小さな体験の積み重ねによって初めて、全体像が見えてくるものなのだろう。

で大差先生も時々横からのぞきながら、無事、正常な直腸が確認できたのだが、患者は結構派手な血便 x1の愁訴だったので、まだ奥に何かあると考えられる。「今週中にまた、スコープするからね」と。

スコープは上からも下からも何度か入れたことはあるのだが、また頭の中で復習しておかないと、いろいろ教えてくださる先生にも、患者さんにも申し訳ない。

2009年7月4日土曜日

家庭医療

家庭医療の外来実習、1ヶ月。制度的に家庭医療が専門科として設定されたのは1969年と最近であるが、本来、近代アメリカの医療の原点はこの家庭医療にある。つまり医学部卒業後1年間インターンとして研修し、その時点で一般医として産科・小児科・内科・ちょっとした外科など全般を行うべく、開業する。

で、今回の家庭医療実習は願い出て、去年の初冬に内科外来実習で一ヶ月配属になっていた暈関連のクリニックにまた置いてもらうことになった。残念ながら、前回主についていたお婆さん中イ左はアフガンに短期派遣されて留守だが、よく面倒をみてくださった指揮管大イ左などは「やあやあ、よくまた来てくれた。」と本当に嬉しそうに迎えてくださった。



で半年以上前とまったく同じ環境で患者さんと接していると、この1年間で、実にいろいろと身についていることがよく実感できる。

学生の実習形態としては、だいたい僕が最初に一通り患者の話を聞いて診察して、「まあ○○の感じです。では指導医を呼んできますね。おそらく、○○など、薬をお出しすることになると思いますよ。ちょっとお待ちください。」といって奥に下がる。そこで、一緒にやっている指導医に30秒程度の簡略なSOAPプレゼン、場合によってはプレゼンしなかった所見やプランの部分についてちょっとdiscussionしてから、また診察室に戻って場合によっては指導医が重要所見をとりなおし、二人で患者に説明しておしまい。

今回主につくことになっているおばさん指導委は、子育てのために退役してパートタイマーなのだが、そのこともあってか、実にのびのびと楽しそうに診療・教育を行う。たとえば、患者説明の段でいきなり話を振ってくる。「いろいろKentaと話し合った様子では、あなたはfibroid(子宮筋腫)のようですね。じゃあKenta、fibroidについてちょっと説明して差し上げて。」

そこで何のためらいもなく、病理・リスク因子・症状やnatural history・治療オプションについて、患者にわかりやすく話せるようになっている自分には、驚くばかりである。我ながら、関心。

constraining emergence