2009年4月30日木曜日

生体腎移植

クランプを外すと、パッと生き返るのは、感動的だ。

で、今日はback tableを手伝いながら、移植臓器の保存液についてpimpされたが、脳研究の生切片の実験をたくさんやっていた頃に色々と調べてあったので、ばっちりであった。もっとも脳科学の生切片は生きていることよりは記録しやすいことが優先なので、最初の1時間くらいで選択的に弱い細胞を殺して、都合のいい切片に作り替えることが、むしろ溶液組成などの目的ではないかと思われる節がある。

いきながらえてもらわないと困る人体の臓器には、細胞内のイオン組成に擬した氷冷液を用いる。で、高カリウムなので、体循環に戻してやったときに注意が必要だ。

2009年4月29日水曜日

移植外科の精神病理

移植外科はなぜ、おかしい人が多いか。フェローによると、46時中当直・呼び出しで働きづめの移植外科フェロー生活の中で、多くの医者が精神病理を来すらしい。たしかに、科の移植外科医たちをみると、それぞれに様々な精神病理を呈している。

2009年4月27日月曜日

アルデンテと茹ですぎ

今日は移植小腸の拒絶疑い患者を、緊急内視鏡に連れて行った。拒絶の病理グレードによって、どこまで強力な免疫抑制を行うかが、決まってくる。

システムの都合上、生検を緊急に確実に読みたいとなると、物理的に人がいて標本を病理部に直接搬送すると1~2時間、削れたりする。午後だったりすると、この1~2時間が大きな違いをもたらしかねない。たとえ緊急標本でも、搬送や事務のいろいろなステージで遅れが生じうるのだ。だから、病棟チームがついて行って、内視鏡からとれた標本を物理的に病理の鼻の下に突きつけることになった、こういうscut(使いっ走り)の局面で、医学生がもっとも有用なのである。

でこの患者さんは大腸が狭窄していて、結局小児用の内視鏡を使うことになった。小児スコープの方が直径が若干だが小さい、では、成人もなぜ、小児スコープを使わないのか?画像などもそう違わないようだし、お尻から入れるものは小さいに越したことはない。

で、消化器内科の先生に聞いたら、太い方が操作が楽なのだそうだ。アルデンテとノビノビの茹ですぎのちがいなのだ、という。人によっては成人もすべて、小児スコープを入れる人も、いるらしい。

2009年4月25日土曜日

When I get a new kidney...

わかっていない。新しい腎臓を入れたって、別に振り出しに戻るわけではないことを。うまく臓器が機能したとして、腎臓病と免疫抑制とをすり替えたに過ぎない。寿命は延びても、また20歳に戻るわけではないのですよ。本来の平均寿命に戻るわけですら、ない。

生体肝移植

意外と、技術的には、たいしたことなさそうだ。結構原始的な手術であった。まあ、ネズミを相手にやっているときとは違い、失敗は許されないわけだろうけれども。

でも実際に切っている人たちよりは、コーディネーターとか、オペ看護婦とか、病棟で術後管理を取り仕切っているフェローとか、裏方の方がよっぽど大変なのではないかという気すらする。

しかし、子供に身を供する母親、というのは、そういうものなのだろう。

2009年4月22日水曜日

The Unit

「The Unit」。

病院を回り始めた頃、これがICU(集中治療病棟)のことであることに気づくのに、しばらくかかった。一般病棟は通常「floor」や「ward」と呼ばれる。

移植外科にいると、外科ICUにも患者が多い。「I'm going to the unit」という台詞もよく聞かれる。あと、「さっきunitにいったらcodeをやっていて、...」「誰が死んだの?死ぬの?」なんていう会話も。そう、心肺蘇生なんていうのは、半分死んだようなものなのだ。

2009年4月21日火曜日

子供の選択権

CFなどの病気だと、子供をいかにして治療に対して前向きな精神状態にするかが、子供のhappinessだけではなく、生存にも響いてくる。だから、子供にも子供なりの選択権を与えなければならない。その際、「Do you want this treatment?」という感じではなく、「Do you want to go to this hospital or that hospital for your treatment?」とか、「Do you want to go on Monday, or Tuesday?」とか、選択肢をうまく絞り込むことが重要だという。

つまり、寒い日に子供に上着を着せるのに、「青いジャンパーがいい?それとも緑色のにする?」といった感じでだまし込むのと、同じ手筋。「いやだ、ジャンパーなんて着ない!」という選択肢を、与えないのだ。

2009年4月20日月曜日

臓器採取

先ほど(21:05)、臓器ドナーがPhiladelphiaにて生じた(お亡くなり)との通報がポケベルに入った。22時集合で採取にいくという。一緒に移植外科を回っているPhiladelphia出身の女の子と電話で相談の上、彼女が遠足で行ってくることになった。おそらくヘリコプター。いきたい気もするが、彼女の実家だし、とてもいきたがっているので譲ることにした。

本当は火曜が講義の指定日なので、月曜は学生は当直をしてはならない、という決まりになっているのだが、まあ、こんな機会は滅多にないということで。彼女はおそらく未明に戻ってきて、朝方まで臓器移植手術に立ち会うことになるだろう。おみやげ話が楽しみだ。

早く生んじゃいたい

研修医 「What is her indication for induction of labor?」
医学生 「SOBP」

SOBとは通常、shortness of breath息切れの略である(娑婆ではson of a bitchの意)。だが産科の俗語ではSOBPはsick of being pregnant。体重は増えるし、吐き気やむくみなどもういやだ、早く生んじゃいたい、ということ。でも、産科にいたときにfull term/no risk factorsの分娩誘発に関連した子宮破裂の症例をみてしまった以上は、たいては大丈夫でも、必ずしも早ければ早いほうがよい、というものではない。

Pimping

Pimping。回診やオペ中の口頭試問を、こういう。アメリカにおける医学教育の中心は、実をいうと、このpimpingにあるといって、過言ではない。人望のあるアテンディング・レジデントは必ずpimpingが上手い。こちらの知識の上限をうまく評価して、そのすれすれ上の質問を出してくる。あと、上手なpimperは学習意欲をうまくそそるし、pimp後の説明によってうまくそのテーマの全体像をまとめてくる。つまり、有効なpimperは、pimpeeの2,3枚上手でなければならない。



Pimpする側の方策もあれば、pimpされる側の方策もある。考えついたものを3点ほど。

1. (初等編)余計なことはいわない、きかれたことだけ答える。余計なことをいうと、そこから発展してpimpingが仔細に突入する可能性がある。

2. (中等編)微妙に違う答えをいう。概要においては正しいが、仔細において不正確であったりあやふやだったりする答えは、pimpeeの知識を提示する役割を果たすと同時に、指導医の教えたい欲求も満たすので、とても好適である。

3. (高等編)自信のある方向にpimpを誘導するように、プレゼントする。あるいは、質問者がはっきりとは覚えていないけれどももっともらしいという印象を持つような答えをいう。



そして、たいていの人は「favorite pimp questions」があるから、周りの学生やレジデントときちんとコミュニケーションをとっていると、そこら辺が前ばらしでわかって、よい。これは必ずしもカンニングではない、つまり、その部分についてきちんと勉強するきっかけなので、pimp道の一環なのである。

あと、とても親切で教育熱心なレジデントから教わったのだが、全く知らないときの答えは、「I don't know, but I'll find out」だそうだ。

たとえば、「What pets does she have?」。これ、医学的知識ではないのだが、感染症関連の患者の、いやな人の常套pimp questionだったりする。まあ、微妙に関係がある可能性もないわけではないが、そんなこと10分以内に患者から聞き出せる、訳がない。そんなことをと聞いていたら、肝心の質問を逃してしまう。だから、正解は、「I don't know, but I'll find out」。



参考
http://gidiv.ucsf.edu/course/things/pimping.pdf

2009年4月19日日曜日

いやな人

まわっている関連病院の外科医たちは、とてもいい人がほとんどなのだが、一人だけ本当に「いやな人」がいる。レジデントたちもこの人のオペには入りたがらずに、人手不足の時などは第一助手が見つからなかったりしてチーフを悩ませる種になっている。

昨日は朝7:30から17:00まで、ずっとその人のオペに詰めていた。



副甲状腺を取り除いてからPTHを測って、という待ち時間があったため、いろいろと雑談することができた。あながちevilな人とはいえなさそう。その人は日本史・世界史にも造詣が深く、雑談していると悪い人ではなさそう。ただ、手術のセンスがあまりよくないだけだ。不器用、というのではない。センスがないだけ。思うに、手術がうまくいかないから、ストレスで「いやな人」になっているのかもしれない。典型的な外科体型で、きっとお酒もだいぶ飲み過ぎの顔色ではあるので、可哀想といえば可哀想。



あともう一つ効いたのが、向こうの質問に沿ってうまく博士をとっているということを知らせることができたということ。外科(医学全般?)というのは結構、弱肉強食の世界なので、弱みを見せるといやな人はつけ込んでくる。そういう人に限ってうまく強みをちらつかせると、簡単に引き下がってくる。そこら辺がつかめてきたので、「What do you want to do?」という定番の質問から、博士もちのDr.であることをあかす質問へとを誘導するパターンはもう、だいぶ慣れた。こういういやな人に使うことにしているが、今回は実にうまく罠にはまってくれた。

「What do you want to do?」
「I'm planning to do a peds prelim year.」(小児科初期研修)
「What do you want to do after that?」
「I'm interested in research, so I think I want to do that.」
 (↑ここらへんの言い方が肝心。ちょっと自信なさそうにもとれる言い回しをしなければならない。うまくやると、こんな感じ↓につながる。)
「Well, you're interested in research... do you have a PhD?」
 (↑いやな人としては、「おまえPhDがなくちゃ、研究してもしょうがないんじゃない?」とつなげるつもり)
「Yes Sir, I've survived that processs.」
 (↑年上の外科はたいてい、sir呼ばわりだが、ここの慇懃無礼具合も、重要。うまくやると、向こうはこちらがまだ下手に出ているということを了解しつつも、これは勝ち目がないと内心さとる。ここらへんの、相手を微妙に揺さぶる具合が重要。やりすぎて向こうが完全にバランスを崩してしまうと、どう進展するかわかったものじゃない。)



ほとんど甲状腺ばかりをやっているとても親切・上手な女医さん。もうこの人と15例ほどやっているし、だから学生なりにも甲状腺周りの外科解剖や術野(retraction)についてはもう頭に焼き付いている。その女医さんは相手が4,5年目のレジデントだと必ず前立ちのレジデントにやらせながらアシストの回って、重要なポイントを口頭でwalk throughするという形をとるため、その上手な人がどうやってtissue planeを見つけて、どこの部分を特に入念にやっているかの哲学もだいたい了解した。おそらく口頭試問されても手術を頭から詳細にdictateできると思う。で、たとえほとんどレジデントにやらせていても、その人の手術は何回やっても、どのレジデントとやっても、できが美しい。

で、上手な女医さんとの比較だから、「いやな人」には悪いが、「あぁ~、そこそこ、だめだめ」とか思いながら鉤引きというのか、retractしていた。ちょっと難しいところになるととたんに、前立ちのレジデントも完全にretractionに回して、自分で勝手にのめり込む。右に回ったり左に回ったりして、一生懸命になる。

「いやな人」は悪いけれども、へたくそ。事実、3週間いてすでに、この人の術後症を2例見てしまっている。首の血腫(甲状腺周りの手術ではこれが一番怖い)と、腹腔鏡手術のtrochar siteからとしか思えない、retroperitoneal bleed。宜なるかな。



一方の上手な女医さんは、何が起きても、事前のプランを変更したりすることは絶対にない。はじめは左にたって、対側に回ると右にたつ。第二助手は必ず女医さんと一緒に動いて、はじめは上に立ち、片側の上半分が終わったら下に回る。この立ち位置を変えることは絶対にない。そして、レジデントによってどこまでやらせるかというのも、事前に頭の中で計画しているようだ。「このレジデントにはここまでやらせる」と一端決めると、少々のことが起きても、淡々と指示を出すだけで、焦って手を出すような野暮なまねをすることは絶対にない。

2009年4月18日土曜日

放屁

腸管の中は位相幾何学的には「体外」にあたるが、その実、とても汚い。むしろ、体表よりも汚いくらいで、腸管免疫系が体の中でも発達著しいのには、訳があるのだ。

そんなわけで腸管の手術をしていると、穴が開くのが怖い。特に緊急手術だと、腸管に糞とかがたまっていたり、腸内フローラの除去療法も行われていなかったりするので、とくに穴が開いたり中身がこぼれたりすると、きっと腹腔内に感染を起こす。

で、昨日の8時間手術の間じゅう雑談していたのだが、アテンディングによるとそのむかし、いたずら好きのアテンディングがいて、手術中にオナラをしてみんなを困らせたらしい。腸管内のにおいがしたらあわてて穴がないか、探さなければならないのだ。

2009年4月17日金曜日

外科で一番難しいのは

「外科で一番難しいのは、手術に入るかどうかを決めることだ」

ちょっと変人だが、とても人のよいお爺さんアテンディング。コンサルトを回診していて、こんなことを宣った。大病院の入院患者は病気がとても重かったりする。で、外科コンサルトの要は、手術をすることを検討するのではなく、逆に、手術できない人を判別することなのだそうだ。このお爺さん、なぜだか気に入られてよく面倒をみてもらった。なんだかんだ、そういうところで運がよいらしい。

外科と研究は、実をいうと同じような気がする。肝心の勝負は、どこで勝負をかけるかによってだいたいすでに決まっている。そしていったんプロジェクトを始めたら博識とか実験の腕とかが絡んできて、いかにそのプロジェクトはそのプロジェクトなりにまとめ上げるか、腕の見せ所である。つまり、いったんオペに入ったら、あとは、それなりに決着までたどり着かなくてはならないのだ。

移植チーム

日曜当直で関連病院の外科チームを終え、月曜からはローテーションが変わって大学病院の移植チームへと。手術も病棟での患者管理もとても難しくて、学生はほとんど何もさせてもらえない反面、とてもamazingな手術をたくさんみられるという。臓器の摘出にも連れて行ってもらえるそうで、ドナーの病院によってはヘリコプターにのってフィラデルフィアまで行った学生もいるらしい。

楽しみである反面、学生2人で当直を分けなければならいらしく、つまり、2日に一編、当直となる。まあ、忙しくなければhome call(電話まち)をさせてくれるらしいのだが。当直ではない日も、朝はちょっと遅く6時くらいから、そして夜は20時くらいまで詰めているらしい。

この先1ヶ月、ちょっと心配だ。そもそもメディカルスクールのローテーションの何が一番堪えるか、というと、数週間単位でチーム・科を移らなければならないこと。毎月が4月の新学期のような気分であると、精神的につらい。

2009年4月16日木曜日

Field Promotion

戦場で、特例の昇進。これを、field promotionという。外科では、危急に人手が必要となることが多いので、時々、これが起きる。

今日はシニアレジデントと指導医の難しい大腸再吻合に入ったのだが、途中で隣の部屋の気管切開周りがおかしいことになって、緊急にシニアが引き抜かれた。よって、30分だけ、第一助手というのか、前立ちというのか。まあ、あまり難しい部分ではなかったしとても親切な指導医だったので、どうということはなかったのだが。

それにしてもこの手術、一緒に回っている女の子と急遽交代して13:00すぎから、患者を入れるところから入ったのだが、終わったのは21:30。8時間たちっぱなしだった。しかも、体重が重い人で手術歴も多いのであけるのが大変。「waterskiing」というのか、Kocherみたいなので筋膜を体重をかけてひっぱたり、結構な運動であった。

手術とか解剖とかは、ハンバーガーみたいなものが食べたくなったりする。近所のおいしいハンバーガーやさんで並びながら、1時間足らず前に人の腸管を手にしていたことにはっと気づく。動く。そして、生ぬるい茹ですぎの伸びたうどんの感じでしょうか。

2009年4月15日水曜日

葛藤

「Kenta, you're going to be a really good doctor.」

もう3週間も一緒に働いている超熟練のオペ看護婦さん。細かいことに実に細かく気が回る人で、人当たりもよいので、患者さんには大人気。ルールには厳しく、この人のオペ室では患者の取り違えとか、機械の体内への置き忘れなどは当然のこと、些細な器具の整備不良なども絶対に起こりえない。でいつもの通り、麻酔から覚めつつある患者さんの世話を手伝っていたら、↑のように、いわれた。

直接のきっかけは、患者さんの足に機械を取り付ける前に一言、「足に○○をつけますよ」と一言声を掛けただけなのだが。曰く、「もっとずっと慣れたレジデントでもね、寝覚めの意識が朦朧としている患者さんにもきちんと声をかけられる人は、ほとんどいないですよ」だそうだ。まあ、種を明かせば、その看護婦さんのスタイルをまねている部分は多分にあるのだが。

でも、もう3週間もあのオペ室で働いているので、総合評価も含んでいるというのはまあ、間違いない。そのオペ看、必要とあれば容赦なく厳しい人で、右に左に愛想を振りまくような人ではない。しかもきっと30年以上にわたるキャリアで、想像を絶する人数の指導医・研修医・学生を見てきている人である。優秀な看護師ほど、医師~学生をよく見ているし、見る目は厳しい。そういう人にある程度評価されると、言葉の重みというかありがたみというか、付随する責任感が段違いである。「でも、実をいうと研究が本命なんですぅ~。ボク、doctorにはならないんですぅ~」なんて、口が裂けても、いえない。

今週でこのローテーションも終わりだと知るや、「あら先生、Kentaはこのローテーション、不可ということにしましょう、そしたらずっとうちに引き留められますわ。」などと、指導医と冗談を交わす。ありがたいというか、騙しているようで申し訳ない。実をいうと医学生は仮の姿、心は研究室から一歩も出ていないのに。

帰りの車中、頭の中で繰り返し考えたが、研究をきちんとやることと臨床をきちんとやることとは、やっぱり僕には、同時に両立できるキャリアではない。そしてそろそろ最終選択を迫られる時限だが、やっぱり、研究が、本命だ。長年の教育と、数え切れない人たちの教え・努力・好意を踏みにじったうえでも、研究が、本命だ。

たゞ水の泡にぞ

オバチャン、昨日は看護婦さんと冗談を交わしたり、歩きまわったりしていた。まあ、総じていうと健康ではないのだが、やっとリハビリ施設へと退院できるか、という感じだった。

昨晩容態が急変、ICUへ。CXRなど様子をうかがうと、何かの具合での吸引性肺炎に、相違ない。朝の回診では、もう何週間も面倒をみているチームの面々を見渡して、ほっと安堵の一息。ICUチームに引き渡したのだが、「またいつ病棟に戻ってくるの?」という感じのsocial consultであった。

夕方の回診。ICUのconsultをまわるも、その患者さんの部屋の前は素通り。綺麗に掃除されている。ずっと手術に入っていたので、知らなかった。

2009年4月14日火曜日

クラス会

夜7時、例によってクラス会。同級生は皆来年度の前半のスケジュールで大変だ。7月から11月くらいまでの間に、志望科におけるGeorgetownでのAI(インターン実習、事実上インターンの代行)や志望先でのオーディション実習を詰め込まなければならない。あと、Step 2のCSも、12月31日までに受験することが義務づけられている(追試処分になっても卒業までに修了できるように)。担当の教授からの説明や事務の説明があった。

茶色の靴下

人間的におもしろい人たちと手術に入ると、いろいろな話が聞ける。特に、ルーチーンな機械的作業の多い手術だと。で、隔日くらいで甲状腺に入っている先生は、病院の指導部でもあるので、いろいろな人生訓を教わっている。

で、病院のCEOを選ぶ際に、ある人は、靴下が茶色でスーツと合っていないから、という理由がメインではねられたそうだ。選考委員長の偉い先生が、そういうところ細かいのだ、という。そしていろいろな理由は後付けされるにせよ、決め手は靴下だったそうだ。

確かに、対外的イメージを保つ商売(経営・医者)には、そういうセンスは重要なのだろう。

こういうのはめんどうくさいので、早く、研究の場に戻りたい。

2009年4月11日土曜日

DC tap water

手術時の手洗い。一生懸命手を洗ってから、最後は、水道水で洗い流す... DCの水道水がどの程度きれいかは、不明だが。

まあ、そもそも、手は滅菌できないという前提で滅菌手袋をはめる訳なので、手洗いは儀式のようなものと考えればよいのだろう。食べる前の「いただきます」に類するものだ、と。

手洗いよりもアルコール消毒剤の方が有効性が高いという話だって、あるわけだが、かといって手洗いではなくアルコールを使う外科医はほとんどみない。OP看護婦やscrub techでは、アルコールを使う人も多いようだが。

2009年4月9日木曜日

Contraindications to digital rectal exam

直腸検査の禁忌事項は?
「You don't have a finger」
「The patient doesn't have an anus」

これ、外科医なりのジョークらしい。DREは絶対にやれ、と。

2009年4月6日月曜日

6SE syndrome

関連病院の6SE病棟(仮)。今やほとんどの大病院にある、デラックスホテル病室の病棟である。それとは知らずに回診前の準備(preround)でいったら、いきなり絨毯にシャンデリアである。ネクタイではなくscrubs(手術着)であるのが、恥ずかしい感じ。

まあ、医療なんていうのはこの国ではビジネスに過ぎないから、こういうのも必要である。貧乏な患者なんて、学生や研修医のトレーニング(つまり病院の評判の維持)には好適であっても、その効用以上の経済価値は、はっきり言って、ない。心カテとかinterventional radiologyとか、限られた高収益procedureが必要ない患者は、結構まともな健康保険の患者でも、赤字すれすれの入院だ。だって、保険屋がちゃんと請求額を病院に払わないのだから。だから、ホテルみたいな副収入源が必要である、そういう経済システムがしかれているのだ。



で、この病棟。あまりに快適すぎて、患者が長居してしまいすぎるのだそうだ。それを6SE(仮) syndromeと呼ぶらしい。

先月一般外科チームに入院していた患者なんかは、長居しすぎて、肺塞栓を起こしたという。今チームで持っているデラックスお客様患者様は、一生懸命退院させようとチーム一丸となってがんばっているのだが、なんやかんやいって、出て行かない。病院なんていくら居心地がよくたって、必要のない人にとっては百害あって一利なし、ということが、わからないらしい。

あと、金持ちの患者にはどうしても、医療チームの方がいいなりになるというのも、弊害だ。たとえば血栓防止のSCD (sequential compression device、ふくらはぎマッサージ風船のようなもの)を付けろとか、ふつうの患者には結構きつく言いつけるわけだが、そういう点でもお客様患者には逆に行き届かないことだってあろう。



貧乏人が長期入院すると、とたんにケース・マネージャなる人たちが出てきて朝から晩まで退院させろさせろと煩いのだが、この6SWでは、全く不要な入院でもうんともすんとも言わない。これこそ、アメリカという社会の真の姿である。

2009年4月5日日曜日

工学的な脳科学観・医学観

By a sort of comic and awful analogy, our current cognitive neurology and psychology resemble nothing so much as poor Dr P.! We need the concrete and real, as he did; and we fail to see this, as he failed to see it. Our cognitive sciences are themselves suffering from an agnosia essentially similar to Dr P.'s. Dr P. may therefore serve as a warning and parable--of what happens to a science which eschews the judgmental, the particular, the personal, and becomes entirely abstract and computational.
-----Oliver Sacks "The Man who Mistook his Wife for a Hat and Other Clinical Tales

理性主義はすべての分解産物を独立とみるが、実をいうとそうとは限らない。生き物なんていうのは往々にして、もっとグチャグチャに混ざったものである。医学には特に、ある疾患の「患者像」みたいな総体を大切にする伝統があったはずである。でもいまや、診断所見のOdds比などが、流行っていたりする。独立でない事象のOdds比をいくら掛け合わせても確度が高まるとは限らないのに。

脳という一番グチャグチャの臓器を相手にしている神経内科・精神科などには、まだ、この全体観を大切にする流れがかろうじて残っているのかもしれない。

2009年4月3日金曜日

Professional Retractor

今週はひたすら、レトラクタを引っ張っていた。一般外科のチームなのだがなぜか甲状腺が多く、今週は10症例くらいやったのではないだろうか。甲状腺は神経、動脈、静脈、気管、副甲状腺など、いろいろと重要な場所にあるが、首筋に傷が残るのであまり派手には開けない。でも、結構派手にひっぱっりながらやるので、気は抜けない。

だから、retractionが便利なわけで、甲状腺があると必ず、チームの学生2人のうちどちらかがscrub inしろということになる。まあ、見物だけでなくてなにかしら役割を果たせるのはよいが、今日なんか3例もやって、3件目は昼食後でもあり引っ張りながら目が閉じないようにがんばるので精一杯だった。今日の3例は、もう5症例以上scrub inしているattendingなので、いわれる前にどこに動いてどう引っ張ればよいかが完全に読める。楽といえば楽ではあるのだが、逆に緊張感が薄れて眠い。転移性の主要でリンパ節などを取り始めたりすると、丁寧な指導医だと簡単にすぐ4,5時間立ちっぱなし。変な姿勢で引っ張ったりするから、肩がこる。

明日の朝の回診で術後の経過を5年目レジデントに報告することになるのが、最後に縫合しながらいくら考えても、誰がpapillaryで誰がmedullaryで、とか、ぐちゃぐちゃになって、患者さんの顔すら浮かばなくなってきた。しかも明日(土曜)の休日当直は5年目シニアと、口腔外科(歯医者さん)の2年目レジデントと、僕だけ。結構、働かなきゃならなさそうだ。シニアが6:30に始めるというから、明日は4:00前から一人で回診の準備を始めないと、間に合わなさそうだ。歯医者さんは遠くに住んでいるので、きっと6:00近くにくるだろう。今日(金曜)は症例があまりに多かったので、明日の朝、気が重い。まだ夜8時だが、もう寝た方がよいかもしれない。

2009年4月2日木曜日

A complication of OB/GYN

回診中、4年目レジデントが、「産婦人科関連の手術は、SOB(小腸閉塞)を一番引き起こしやすいんだよね」と教育。すかさず、5年目レジデント曰く、「それは、産婦人科手術の副作用ではなく、産婦人科の副作用だよ」と。

たしかに産婦人科の手術はsterilityがとても難しかったりするのだろうが、いや、産婦人科医がいけないんだ、という。外科では、産婦人科を外科と見なしていない節が、時々みられる。