2009年3月31日火曜日

AMF YOYO

カルテには、決して書かないのだが。患者にわからない隠語がいろいろとある。
Adios my friend, you're on your own...
あばよ、アミーゴ、勝手にして頂戴

2009年3月30日月曜日

十一戒

第十一戒、「汝、重力に逆らって回診するなかれ Thou shalt not round against gravity.」
ようするに、一番高層階の患者から初めて、階段を下りながら回診せよ、というもの。あるいは、2 floors up, 3 floors downという人もあった。登りなら2階分までなら歩く。下りなら3階分までなら歩く。

一方で、階段をまったく苦としない人もいる。

患者が分散しがちな大病院にいると、運動不足には、ならない。

2009年3月29日日曜日

postoperative ileus

acute in vitro preps of ENS???

当直室

周産期病棟で待機しながら本を読んでいたら、コクリ、コクリ。するとちょうど部長先生がとおりかかって、「眠いときは、当直室に行ってらっしゃい、そのためにあるんだよ」とやさしく注意してくださった。ああ、優しい人柄の良好な人たちの科で、よかった。明日から外科だが、総じてmalignantな人が多いという。より時間も厳しいので、疲れて居眠りせぬよう、心して望まないと。

それにしても、研究室が、恋しい。いつ寝ようが、いつ働こうが、結果さえ出していれば、勝手。

2009年3月28日土曜日

疫学は難しい

今日はDiGeorge症候群についてちょっと勉強していたのだが、疾患のpresentationが多様なので、人口あたり1/6000とか、そういう数字はどの程度信頼してよいものなのだろうか。あと、50-80%は心臓の臓器形成異常があるというのだが、その数字にしたって、心臓がおかしいと堕胎とか、顕在性の奇形が軽い場合は診断前の死亡もきっと増えるので、この数字にしたって、解釈は難しい。

産婦人科終了

とりあえず、色々と体験を積みました。試験自体は結構難しかった... というのも、大抵妊婦で出血とか、月経過多・無月経・月経困難とか、問題のシナリオがだんだん混じってきて、頭の中が意味不明に。まあ、病棟では結構ちゃんとがんばったし不可はたぶんなかろうと思うのだが。

2009年3月26日木曜日

内科説明会

今日は内科研修、内科・小児科研修、内科初期研修希望者を対象とした説明会が開かれた。内科の諸先生方と内科にマッチしたばかりの4年生たちとが、3年生を対象にこの先一年間のマッチまでの課程やポイントを説明。明日産婦人科の試験なので、ざっとメモだけ。
  • オーディション... 内科の場合は基本的に不要、場合によっては負に働く。でも、研修先の素顔をみておくという意味で有意義である、インタビューの日はよいところしか見せてはくれない
  • そろそろCV履歴書やpersonal statementのテーマを考え出した方がよい
  • 内科研修部長、学生教育部長などとよく相談して、応募先を決める(reachとsafety滑り止めの両方を含めてバランスよく)
  • program coordinator(事務の人)がとても重要。内科研修のprogram coordinatorもこの説明会に参加していて、彼らの立場からみた攻略法を説明。だいたい、program coordinatorと密に連絡を取って愛想よくしておくと、印象に残っていて、そのつもりがなくても事務の際にどうしても丁寧に扱うことになりますよ、だそうだ。逆にprogram coordinatorに対してあまり失礼はないように、それがあると×がつくそうだ。ま、当然といえば当然の話だが。
  • どうしてもいきたいプログラムで11月末くらいまでにインタビューをもらえなかったら、まずはprogram coordinatorに直接、強い希望を伝える。それでもだめなら、研修部長・教育部長に電話を入れてもらう。もしもあまり無理のない範囲の志望先だと、これでだいたいインタビューがもらえることが多い。(GeorgetownならGeorgetownの学生は何人までインタビュー、という枠がだいたい決まっていて、それでインタビューがもらえないことがほとんどなので、そういう意味でこの学校からの推薦電話一本がきいたりするのだという)今年も何人か、この手段で手に入れたインタビュー先にマッチしたという。
  • Personal statement... 必ず教育部長か研修部長に下書きを直してもらうこと。
  • 推薦状... 有名な先生よりは、直接指導下で臨床をした先生、そして心のこもった人柄が伝わる推薦状を書いてくれる先生を選ぶこと。書き慣れていない先生は選ばない方がよい。推薦状の先生を選ぶ前に一言、教育部長・研修部長に依頼リストを見てもらうと、やめておいた方がよい、手紙の下手糞な先生を指摘してくれるそうだ。
  • マッチした同窓生に連絡して、プログラムの短所長所を調べる
どの科もそのようであるが、内科の先生方も、内科に進みたい学生の面倒をじつに事細かにみてくれるつもりらしい。こうして、うちの学校のマッチ実績が保たれているのだろう。

Fetal swallowing

Mainly during active sleep states

男性患者

産科の腫瘍チーム(Gyn-Onc)を回っていると、一般病棟なので、男性患者がいる。周産期病棟とか産科一般がずっと続いていたので、妙に新鮮だ。

で、普通のプレゼンテーションの最初は必ず 「XXX is a YY year old male/female with...」と始まるのだが、産科だとこのfemaleというのを割愛して、場合によってはG5P3023とかなんとか、出産歴をいれる。来週からは一般外科なので、また通常のプレゼンテーションに戻さないといけない。

2009年3月22日日曜日

卵巣ガンと保険適用

一昨日は産婦人科の学生向けの特別講義で、地元の卵巣ガン患者団体のおばさんたちが3人、話をしにきた。いろいろな病院・医学部・一般人向けのセミナーを通して、卵巣ガンの初期症状(腹部の鼓張、膨満、尿意切迫・頻尿、食欲減退・満腹感、腹部・骨盤部の痛み)について教育して回っているのだそうだ。そして、それぞれ自分の診断にいたった経過を話してくださった。



あるおばさんは、理想的な診断だったという。症状を呈して医者にいったら、すぐに放射線科で検査を受けて、治療も2週間以内に開始できたという(このおばさんは連邦政府職員というから、まともな健康保険なのではあるが)。



もう一人のおばさんは、2年以上にもわたって家庭医に無視され続けて、ついにしびれを切らせて専門家にいったら、全身に転移したステージ4だったという。卵巣ガンなどと相関のあるCA-125という糖蛋白マーカーがあるのだが、診断時にはそれが正常値の50倍以上であったという。「私、インターネットで症状を調べていたんです。それで何度、家庭医にCA-125を測定してください、ってお願いしたことでしょう。でも、必要ない、きっとただの逆流症状ですよ、と無視され続けたんですわ。あなたたちは、患者のいうことにもうちょっと耳を傾けるようにしてくださいね。」

このおばさんがわかっていないのは、「CA-125は卵巣ガンのスクリーニングには有効でない」という「エビデンス」が存在していて、それを根拠にたいていの保険屋は、スクリーニング目的ではこの検査に全く支払いがない、ということなのだ。つまり、家庭医の医院でもしもこの患者にCA-125検査を行っていたら、家庭医には一銭も検査費が戻ってこない、つまり、医院にとっては完全なる赤字検査である、ということである。症状がどうであれ、保険屋には関係ない。たとえ検査結果がHH(very high,とても陽性)で、その後卵巣ガンであることが判明したとしても、保険屋には関係ない、100%医院持ちということになる。



つまり、「エビデンス」というのは聞こえはいいし、重要な概念ではあるが、同時に、保険屋のコストカットの手段という側面がぬぐえないのである。一線で「エビデンス」を蓄積している臨床家たちはもちろん、患者のためを思ってやっている。だが同時に、<evidence-based medicineという概念が唱えられ出したのは、アメリカにおいて健康保険が完全資本主義式に転換しつつあった時期と重なっている>という事実も、否めないのだ。

現場で「エビデンス」は、個々人のプロフェショナルとしての判断を奪う手段として、用いられかねないのだ。料理人と、マクドナルドのバイトとの間の距離は、かくして、狭まる。

2009年3月21日土曜日

赤髭先生

一緒にクリニックをやっていた先生。「そう、研究したいのね。まあ臨床も最近は全くお金にならないからね、その意味ではそういう誘惑からは自由になるわよね。思った通りのことをできるのはいいことだわね。」

その先生、お金のない患者さんで還付率の悪い保険に入っていて、高価な検査なんかをすると、事務に出す請求書類に「書き忘れる」のだそうだ。「だってさ、どうせい払えないんでしょ。」

この先paper pusher達がどんどん自動化を通して医者の首を締め付けてゆくと、こういう赤髭行為も不可能になるだろう。

2009年3月19日木曜日

蠕動運動

蠕動運動が腹腔鏡から見える。感動的。しかも、レジデントの信頼を得るとともに、いろいろやらせてもらう範囲も拡大する。あと、ゆっくり丁寧にやって隠していたのだが、縫合が速くて上手いということがばれてしまったらしい。それはそう、小動物の手術になれているものね。そっちの方が人間よりも、よっぽど難しいに決まっている。だって小さいし、しかも小動物はどうしても自分でひっかいてしまうので、それでもきちんと治るためには、結び目の固さや針の目の深さなど、いろいろセンスが必要なのだ。脳みたいな複雑な臓器だと、動物の健康状態によって実験結果が大きく変わってくる、ということを解さない人には、小動物の手術なんていうのは炎症だろうが何だろうが、どうでもよいのだろうけれども。

今日はしかも、マッチデー。MD/PhDの友人(先輩?)はBaltimoreの有名な大学病院にマッチしたが、本来は西海岸に行きたがっていたから、全米1,2のメディカルセンターでも、失意のことと思う。週末に飲もうということになっていたが、これは、やけ酒になるか?

それより何より、結構ちゃんとした雑誌から、とんでもなくどうしようもない論文の査読がきていて、今日が締め切り。まあ、駆け出しはこういう下働きをさせられるのは、研究にしたって臨床にしたって、変わらない。いかにして素知らぬ顔してとんでもない酷評を書くか、これも、臨床と一緒で演技の一種と考えればよかろう。まあ、英語圏の人じゃないし、そういう間違いはちょっと寛容に見逃してあげるといったって、ストーリーがまったくなっていないのはどうにも助けようもない。

2009年3月18日水曜日

面談

そろそろ、来年度の4年次away electiveの出願をしなくてはならない。(アメリカ国内のメディカルスクールに在学している場合、通常出願費100ドル程度の実費で、よその学校での1ヶ月単位の病院研修が可能だ。まあ、出願して採用されればの話ではあるが。過誤保険などは通常、出身校の保険を適応、外国からの場合は、相互利益がないだけではなく、この過誤保険もネックとなるようだ。マッチ前のオーディションとして、将来働きたい研修病院で行うことが(特に競争の激しい病院や研修課では)通常である。

そのほか、臨床キャリアプランの落としどころがだいたい見えてきたので、それも含めて、病棟で親切に面倒をみていただいた小児科の教授と面談することにした。この先生の旦那さんは実を言うと、著名な理論脳科学者でもある。



で、awayの出願は、各メディカルスクールの在学生のローテーションがあらかた固まる4月後半あたりが、山場なのだ。在学生のローテーションを確保してから、よその学生で、穴を埋める。

実際にawayをするのはいつかというと、通常、4年次の最初は自身の出身校で内科や志望科の4年次acting internship(subinternship)を1ヶ月やって経験を積み、晩夏から初秋にオーディションするというのが通常のスケジュール。面接シーズンの晩秋までにはだいたい皆、終える。僕は研究を1年間はさんで1年遅れのマッチとなるため、冬から春にかけて、そして同級生のマッチが決まったあとも、オーディションが可能である。



Audition awayを行うかどうかについては、賛否両論ある。面接ではある程度コントロールされた状況下で評価されるため、売り込みのうまい場合はオーディションなどしない方がよいような場合だってある。オーディションで1ヶ月いた場合など、ボロが出たり、あるいはたまたまチームが悪かったりして大失敗、なんていうことだってないとはいえない。

僕の場合はおそらく小児科のインターンという普段ないパターンの研修を行うことになりそうなので(小児科は通常、3年一貫教育である)、研修先も全国17カ所の24ポジションに限られる。ごく限られたポジションなので、教授からは、志望順位の高いところの中でなるべくたくさんオーディションをするように、アドバイスをいただいた。あと、君は、面接という限られた時間よりもじっくりと働きぶりをみてもらった方が有利なんじゃないかしら、と。一応、褒め言葉と受け止めておく。



さらに、今までの科での評価からは、「内気すぎる」というのと「もっと自信を持って」というのが何度も出てきたので、それらについても相談した。「自信」については、まあ、経験を積めばどんどん直るだろう、と。特に、希な鑑別もよいが、非常にコモンな鑑別と、あとは危険信号にきちんと対応するような訓練を積めば積むほど、自然に治るだろう、と。つまり、研究のような勉強の仕方だけじゃなくて、もっと実践的な対応もちゃんと経験を積むよう心がけると、楽になるのだと。確かに僕は、本を読めば人生万事解決すると思っている節があることは、否めない。

「内気」については、まあ、あまり無理はすることはないけれども、「これは自分の職業的な仮面だ」という側面を意識すると、気が楽なのではないか、と。まあ臨床の場では普段の生活ではとてもではないが口にできないようなことを訊くたり、とてもではないが他人にはできないような行為を平気で行うことになる。それらが自分の素ではないことをしっかり意識して、白衣と一緒にある人格もまとうような感じを頭のどこかで意識するといいよ、だって。

あとチーム内では、手の空いたときに進んで色々な人に話しかけて手伝うような積極性があると、周りの印象がだいぶ違うんじゃないかしら、だって。あまり黙々と働くのは、よくないようだ。

また、3年生はよっぽど忙しい場合や簡単な患者をのぞいては、すべてレジデントの監督の下であったり、レジデントが後で重要な所見は取り直したりすることになるので、臨床上の役割がだいぶredundantである。4年次のAIになると、そこらへんの責任も一段高まるので、その意味でも役割がはっきりして、自信を持って演技に臨める気も、する。

2009年3月17日火曜日

Scrubbing In

手洗いというのか、scrubbing、つまり手術の前に入念に手を消毒する。で、その手術にscrub inする際の医学生のマナーというのが、ある。

まず、手術前はなるべく直前まで、患者の移動やFoley(尿道につっこむカテーテル)などの手伝いをする。

だいたい終わった頃合いを見計らってORを出て、手洗い開始。このタイミングがまずは重要である。というのは、絶対に、レジデントやアテンディングよりも先に手洗いを終えてはならないという、暗黙の了解があるからだ。Scrubbingの時間は5分とかなんとか、いろいろ決まってはいるのだが、医学生にとっての決まりは実をいうと一つだけ。レジデントとアテンディングが終わった時に、十分な消毒は完了するのだ。

入念ならばいい、という問題でもない。レジデントとアテンディングよりもあまりに遅く入ると、いろいろなことが始まってしまい、gownなどを着せてくれるscrub nurse/techに迷惑をかけることになる。早く来てretractしろ、とか、文句もいわれかねない。だからレジデントのすぐ後について入っていくのが理想的である。

もしもアテンディングが遅れている場合などは、レジデントが洗い終わったすぐ後に、ついて入るのがよい。ここは迷わず。まごまごして、洗い終わる直前にアテンディングが入ってこようものならば、またアテンディングが終わるまで、手洗いを続けなくてはならないからだ。

特に知らないアテンディングだったりすると、ここらへんの立ち会い前の仕切りの具合で、どれだけいろいろやらせてもらえるか・教えてくれるか、それともずっとRichardsonを引っ張っているだけかが決まるような気がする。

産婦人科の先生方はみんな親切なので、この間合いを遵守すると「あら、いつまでも手洗いして、本当に清潔好きな医学生ですこと。」とか冗談を言われたりもするが、それにしてもこここで、いわゆるKYでないことが認められるわけである。ぶっきらぼうな先生の場合は、ここの間合いが悪いと、逆にそこから意地悪が始まるという。

leao sd

2 part study, bursts recover first!

Diagnostic Laparoscopy

驚くくらい鮮明に、腹腔内が、見える。しかも健康な若い人だから、なおさら。"Fantastic Voyage(ミクロの決死戦,1966)"というのがあったが、そんなのも、顔負けだろう。時間がちょっと余ったので、「こっち肝臓ね、ほら、これ盲腸」、と案内してもらった。「ちょっと、子宮、もうちょっと持ち上げてちょうだい」

染料をちょっと使ったので、じゃあ出る前に掃除するか、ということで、ピュッピュッと生殖水を吹きかけて、チュッチュッと吸い取って。やっぱり、この先、オリンパス株とか、買いかもしれない。

Food Allergies

Why are some food allergies outgrown and not others?
Why critical age groups for different allergens? Infectious superantigens? Dietary habits?

2009年3月15日日曜日

ER時代の終焉

来る4月、シカゴの大病院救急での人間的葛藤を描いた人気ドラマ「ER」が幕を閉じる。メディカルスクールに入学した頃の同級生は、紛れもなくER世代の学生だったので、時代の流れを感じずにはいられない。そしてかくいうかつての同級生達も、内科・小児科など3年間のレジデンシーに進んだ者は今年卒業、夏から勤務医や専門フェローになる。

ERは、葛藤のドラマである。Dr. Greene、Carter、 Dr. Benton、Dr. Ross。アメリカ医療の制度的崩壊の中で、伝統的なアメリカ医学のvaluesという建前が、資本主義という大義名分に押しつぶされる。その中でも「ER」の主人公たちは、なんとか、辛うじて、真摯に、医業のcreedに恥じず生きようとする。主人公達の、建前と本音の狭間の葛藤を目の当たりにしつつ、そして場合によってはそれにあこがれをもって、僕らは、医業というギルドに入門を申し出たのだった。



しかし、ERというドラマは、誰も見る人がいなくなって久しい。僕もメディカルスクールに進んだあたりから、忙しいのと、話の要であるグリーン先生がいなくなったこともあって、見なくなった。そして脳科学の博士を修了して医学博士課程に再合流した今、一回り下にあたるクラスの同級生達は、もはや、ER世代ではない。むしろ、「House」や「Scrubs」の世代である。

「House」の主人公、Dr. Gregory Houseは、自らのintellect以外の全てのものを馬鹿にしきっている。その中で毎週毎週、難しいcaseを見事に完治してゆく。そこには、体制にあわせようという意志は、全くない。建前など、とうに捨てている。「Scrubs」はほとんど知らないのだが、難しい問題もすべてコメディータッチに笑い飛ばしてしまう。

これらのドラマは、葛藤を超越している。そこには間違いなく、違った時代の息吹が感じられるのだ。



「We hold these truths to be self evident...」というアメリカ独立宣言の文句は、実に、「建前がない・全て本音」というアメリカ建国のタテマエを象徴している。「この真実、当たり前でしょ」。しかし、建前のない社会など、現実には、あり得ない。アメリカ史の200年とは、この「建前がない」というタテマエと、建前を必要とする社会のホンネの戦いと読める。

奴隷制度、黒人差別、階級差別。アメリカという国はこれらの建前に反した本音に支えられて生きてきた。が、1960年代という歴史のcataclysmで、この本音は形式上、一掃されたのだった。このあたりから、「建前はない」というタテマエは、タテマエではなく、本気で信じられるようになる。

本音が一掃されて建前が現実のものとして受容された社会では、「アメリカンドリーム」も、現実と錯覚されてしまう。誰でも、無限に富を累積できる。誰でもクレジットカードを駆使して、ハリウッドスターのような生活を送れる。誰でも、無限のエネルギーと食料を浪費できる。誰でも、大学院にさえ行けば博士になれる。誰でも、USMLEとboardsを無事終了すれば、名医になれる。

建前と本音の葛藤を了解しない社会にこそ、「アメリカンドリーム」というネズミ講型社会モデルが、真に開花できたのだ。



アメリカ社会、そしてアメリカ型に染まった世界が崩壊の瀬戸際を漂う中、この「House」や「Scrubs」は実に、歴史的な大潮流の息吹を反映しているように思えてならない。「ER」は、「建前がない」というタテマエと「建前」というホンネの間で板挟みになる主人公たちの葛藤の物語。「House」などは、建前を捨てたときに、何が残るかを問う物語なのである。

参考: 知人のブログ。Star Warsの世代交代に、同じような構造を読んでいる。

2009年3月13日金曜日

泥酔妊婦

予定日よりもずっと前に陣痛が始まってしまった場合、新生児の予後が悪いから、早産防止薬(tocolytic)を投与する。だが、必ず効くような特効薬はなく、新しい論文が出るたびにみな右にならえするような状況に近いという。

で、ある老教授曰く、「いやね、私が始めた頃なんてアルコールでグデングデンにして早産防止ができるとみんな思っていたものだから、high risk patientの集まる大学病院の周産期病棟なんて、結構なご婦人がアルコールを飲まされて酔っぱらって、とんでもない暴言を吐いたりして、それはそれは、おもしろかった。ワッハッハ。」

2009年3月12日木曜日

I have a feeling...

朝のカンファ。

教授 「この患者さん、○○の治験にちょうどいいんじゃないかしら」
レジデント 「I have a feeling she's really not going to agree to be in any studies...」
一同 「(笑)」

難しい患者は(つまり対応の難しい患者は)、臨床の治験などに含まれる可能性はより低いに決まっている。いくら大教授がどうおっしゃっても、難しい患者は難しい患者、現実に施行するレジデントは日常に追い回されているわけで、必ずしもunbiasedな研究者ではない。ここにもまたひとつ、臨床研究の落とし穴がある気がする。

エビデンス、エビデンスと呪文のように唱えれば何でも治ると思っている節のあるレジデントも見かけたりするが、trialのエビデンスは実験科学者の目から見ると、あまりに多くの交絡因子(有形・無形ふくめ)があって、科学的ではない感がぬぐえない。そうすると、エビデンスもよいが、「臨床的なカン」みたいなのによるevidenceも、馬鹿にはならないということだろう。

2009年3月9日月曜日

Blessed one

看護婦さんの井戸端会議はたいてい、誰のシフトが有利だとか、そういう話が多い。最近流行のダイエット話も多い。

昨日は日曜~月曜当直で、日曜の夜までほとんど誰も患者さんが来なかったので、シフト談義も一区切りまで行き着いて、別のことについてもはなす余裕があったようだ。子供の命名について。何でも、Barackという名前が大流行だそうだ。

Barack a hot name for new babies
By Jennifer 8. Lee
(International Herald Tribune: November 10, 2008)

2009年3月7日土曜日

acute phase proteins in psych do

Inflammatory processes in Alzheimer's disease.
McGeer EG, McGeer PL.
Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2003 Aug;27(5):741-9. Review.
PMID: 12921904 [PubMed - indexed for MEDLINE]
Neuroinflammation in Alzheimer's disease and prion disease.
Eikelenboom P, Bate C, Van Gool WA, Hoozemans JJ, Rozemuller JM, Veerhuis R, Williams A.
Glia. 2002 Nov;40(2):232-9. Review.
PMID: 12379910 [PubMed - indexed for MEDLINE]

Review of immunological and immunopathological findings in schizophrenia.
Rothermundt M, Arolt V, Bayer TA.
Brain Behav Immun. 2001 Dec;15(4):319-39. Review.
PMID: 11782102 [PubMed - indexed for MEDLINE]

The role of C-reactive protein in mood disorders.
De Berardis D, Campanella D, Gambi F, La Rovere R, Carano A, Conti CM, Sivestrini C, Serroni N, Piersanti D, Di Giuseppe B, Moschetta FS, Cotellessa C, Fulcheri M, Salerno RM, Ferro FM.
Int J Immunopathol Pharmacol. 2006 Oct-Dec;19(4):721-5. Review.
PMID: 17166394 [PubMed - indexed for MEDLINE]
Cytokines sing the blues: inflammation and the pathogenesis of depression.
Raison CL, Capuron L, Miller AH.
Trends Immunol. 2006 Jan;27(1):24-31. Epub 2005 Nov 28. Review.
PMID: 16316783 [PubMed - indexed for MEDLINE]
Changes in the immune system in depression and dementia: causal or co-incidental effects?
Leonard BE.
Int J Dev Neurosci. 2001 Jun;19(3):305-12. Review.
PMID: 11337199 [PubMed - indexed for MEDLINE]

お産

昨晩の当直はとても親切なレジデントで、出てくる赤ん坊を受け止めさせてもらった。男の子の名前は、もう、忘れてしまったのだが。娑婆の人には、そういう忘却は不思議かもしれないが、名前より、体重とApgarの方を覚えている。

2009年3月6日金曜日

Whiff test

膣分泌物と水酸化カリウムを混ぜて、においをかぐ。その臭いで、膣炎を診断するというやつ。ただでさえ、入浴するという良識のない人も多々いる中で、その上、臭いをかげ、と。

どうも、この科はやっぱり、適性がないらしい。

2009年3月5日木曜日

Men, Women, or Both?

産婦人科では、必ず聞かなければいけない問診事項(Do you sleep with ...)。本来は、性感染症と関連する科では、どこでも、訊くべきということになっている。正確な情報を引き出すためには、「今何時ですか?」みたいに何事もなかったようにさらりときくのがポイント。

「How many alcoholic beverages do you drink every day?」とか、「Do you use recreational drugs?」とかと同じたぐいの質問だ。

2009年3月4日水曜日

Hi, it's Dr. XXX, may I come in?

Attending達はシフト交替で周産期病棟をカバーしている。だから、自分の外来の患者だけではない。ほかのattendingの分まで、たくさんの妊婦の世話をする。初対面の妊婦だって、出産が始まったら世話をするし、緊急で必要だったら帝王切開もする。患者の名前なんて、必ずしも覚えていない。

でも患者からすれば、以前自分の出産に立ち会ったattendingとか、帝王切開したattendingとか、そういうのは忘れないものだ。患者からすれば、一生に一回のかけがえのない関係だから。

医者は覚えていなくても、患者が覚えているかもしれない。本来だったら「患者の名前は全員、完璧に覚えている」というのが理想かもしれないが、現実問題、そうはいかない。だから、事実上のサービス業としては、とても難しい窮地である。

そこであるattendingは、当直で患者の病室をまわるときは必ず、戸をトントンとたたいてから「Dr. XXXですけれど、おじゃましていいかしら?」といって入っていくのだそうだ。「あら、XXX先生、お久しぶりですわ」などと患者の方が自分を覚えているそぶりをみせたら、それなりに対応するのだそうだ。

ちょっとした工夫で、だいぶお客さん(???)の印象も違うという。

2009年3月3日火曜日

What is the indication?

学生 「Mrs. X is a 27 yo G2P1001 presenting at 37w4d for elective R C/S...」
アテンディング 「Why can't she wait, what's her indication for early C/S?」
学生 「Well, she just lost her job on Monday...」
アテンディング 「What the #@%&! ?」
学生 「Well, she just lost her job and her insurance runs out next week...」

失業で来週、健康保険を失うので、保険のあるうちに早めに帝王切開。結構yuppieな女性がこんなことになるんだから、この国の景気は、相当、悪いのだろう。それより何より、この国の市場主義健康保険は、すでに、破綻している。

どこの国も健康保険政策はきつい状況だが、アメリカは、先進世界でダントツに破綻している。というか、老人健康保険や軍人保険をのぞいては、破綻というよりは、そもそも、政策がまったくない。どの統計をみても、それは世界的に歴然。金権主義の強い共和党先生ですら、この破綻に気づきだしているが、だからといってオバマ氏がこの惨状を変革できるかは、不明。



23時間観察入院、というのも同類だ。24時間未満だと、多くの保険会社では入院扱いではなく、処置という分類になり、還付率が入院より高いとか、事前承認が不要、とか。だから、出産しそうにない妊婦は、努めて、23時間目に退院してもらうわけだ。1時間後にまた再入院するのなら、それは、それで、よいらしい。書類や部屋の清掃、静脈確保からなにから、社会全体としては大きな無駄になるわけだが、アメリカというシステムは公共の福利という概念を内包していないため、まあ、致し方ないこの蟻地獄。

2009年3月2日月曜日

検査結果の記載法

日本でどういうカルテの書き方をするかは知りませんが、質問をされたので、この(→)skeletonというのは、日本では一般的ではないのかもしれません。枠内に書いたのは、すべて、血液検査の結果です。どこもどんどん電子カルテ化する中で、このshorthandを見かける機会は減ってゆくのかもしれませんが、アメリカでは全国的に、当然のように使われる記載法なので、知って損はないかもしれません。症例発表とかでも、出てきます。ちなみに、最後の肝酵素については、病院によって違った書き方をすることがあるようです。

あと、テキストで打ち込んでいる場合は、以下の感じになります。なれていないと、数字と記号の羅列が何の意味だか、わからないかもしれません。

Na / K | Cl / bicarb | BUN / creatinine < glucose

leukocytes > hemoglobin / hematocrit < platelets

興味のある方は、アメリカの医学生が誰でも病棟で携行しているMaxwellを参考にすると、標準値などともに、動脈血ガスの書き方、reflexの記載方法など、いろいろ書いてあって便利かもしれません。

産婦人科外来

周産期病棟では、スタッフ用便所を使っていたので気づかなかったが、婦人科外来、男子便所が、ない。患者はもちろん、医者も多くは女性なので、当然といえば当然だが。