2008年9月30日火曜日

Salary

今日はレジデントたちの交替の日。明日からはまたもや、同級生レジデントである。

で、今晩は一緒に回っている3年生とレジデントと、3人でご飯を食べに行った。皆ほとんど同い年なので、和気藹々と飲んでいたのだが、最後におごってくれるという。アメリカでは、日本のように簡単におごったりはしない。「給料をもらっているのは、僕だけだからさ。」

実をいうと僕も給料(奨学金)をもらっているのだが、言い出しにくくて、若干uncomfortableな一瞬であった。明日からまた、がんばらなくちゃ。お金をもらっているのだから、少々働いたって、文句はなかろう。

2008年9月29日月曜日

r/o coprocephaly

(著注:本ブログは多分に脚色を含み、詳細は、現実の症例やできごととは対応しない。)

いろいろな意味で偽病の疑いの強いある患者が、急に湿疹を起こした。レジデントが忙しいのは知っていたが、どうしてもオピオイドを出せとうるさいので「患者XY、右上腕にrubor/calor(確認済み)、Percoset希望、r/o malingering」とポケベルで報告した。

また同じようなことがあったら、「r/o coprocephaly」を使ってみようか知らん。(coprocephaly=shithead)

治る病気とConsumptionと

今日の学部生の症例検討会は、アフリカ帰りに謎の高熱と喀血のある患者について、4年生AIが発表した。昨日入院したばかりで、まだ診断は下っていないというもの検査結果も現在形でどんどん更新されていて、エキサイティングであった。結果はきっと、熱帯病かなにかによって誘発されたSLEの発症がもっとも可能性が高い、ということになった。

で検討会のとりまとめをしていたrheumatologistの先生によると、その昔、不治の病で喀血のあるものはすべて、consumption(結核)ということになっていたそうだ。癌だろうが、SLEみたいなのだろうが、本当の結核だろうが。「半世紀前だったら、この検討会は10秒で終わっていたかもしれないね、肺結核・不治、ということで。」

将来、精神疾患などについても、同じようにいわれるときがくるのであろうか?

2008年9月28日日曜日

いすに腰掛けて

実習で殆ど朝早くから晩遅くまで病棟につめているのだが、時々同時に内科病棟を回っている10人程度で集まって、講義がある。先日は患者とのコミュニケーションについて、緩和医療をしている先生が講師だった。

遅刻ぎりぎりで病棟から内科のセミナー室に駆けつけたら、最前列に座る羽目になってしまった。でなにやら、患者がどうたらこうたら言っているのを、眠いのをこらえて聞いていたら、いきなりセミナー室を歩き回りながらはなしていた先生が、僕の真前、ひざも触れ合うくらいの位置に立ちどまった。こっちはいすに座っているから、居心地が悪いたらありやしない。

「何じゃこれは」と思いきや。1分ほどそのままの状態で話を続けてから、話の流れで、「ね、こう話されると、嫌な感じでしょ。」だってさ。で「患者の病室を回診する際も、こんな感じになりがちなんだよ」と。患者はベッド、医者は近くにたったら、まさに、そのとおりである。「だから、朝の忙しいときでも、必ず、いすを見つけて座って話すように心がけるといいよ。」ですって。「いすがどうしてもなかったらね、患者さんの許可を得て、ベッドに座るのだって、私はいいと思いますよ。」

だから今日入院をした患者から病歴を取るときには、いすに座って話を聞いた。確かに、いすを見つけるのは10秒と違わないが、患者さんにとってはだいぶ違うのだろう。あと、code statusのとり方(緊急時の蘇生の有無などについて、事前承諾を得る時の話術)についても話していたが、これは相当な高等編。僕にはなかなか難しい。

2008年9月27日土曜日

TB, sarcoid, SLE

いいこと聞いてしまった。

Attendingに「他に鑑別は」と聞かれて、まったく思い浮かばなかった場合、TB・sarcoid・SLEあたりをいえば、たいてい片がつく、というはなし。

全身、殆ど、なんでもOK!

2008年9月26日金曜日

I'm a poop doc this month

知り合いのレジデントが、今月は消化器を回っているらしい。「今月は、ウンコ先生さ。」

以前は、内科でマッチして、博士の脳科学から、消化器関連(腸管神経系)の研究に転向しようかと思っていた頃もあった。でもないかは忙しすぎて、癌は別として基礎研究をやっている医者の割合は極端に低いし、医療報酬上、内科という科は、基礎研究を全面的にサポートする余裕は、基本的にあまりない。だから、僕はpoop docにはならない。

流行の靴

このclogというのが、やたらと病院中ではやっている.3人に一人はこんな感じの靴をはいている.女の子たちから仕入れた情報によると、一番人気は、Danskoというブランドらしい。

チームがエレベーターを使わない人たちで、しかも今、受け持ちは一般病棟の2階~7階、さらに少しはなれた外科病棟やICUなどにも散らばっているため、現在はいている革靴では夕方ころには足がすれてくる.

土曜日は休みなので、モールに靴でも買いにいこうか知らん.

2008年9月25日木曜日

チームの年齢構成

内科の現在のチームは、レジデントが27歳。インターンは28歳。もう一人の学生も28歳。僕は29歳になったばかり。逆ピラミッドの、まったく変な話だ。

ジョークでドクターと呼ばれたり。まあ確かに博士だからドクターなのではある。まあそんなこんなで、人手が足りなくて忙しくしているが、和気藹々と毎日やっている。

2008年9月23日火曜日

カルテ研究の難題

保険が降りるように相当幅を持って診断などは記載されていたり。これではカルテ研究にはならない。

If you haven't been sued, you will

ある朝、カルテ記載の略語に関するミニ講義後、指導医いわく。「まだ医療過誤訴訟を起こされていなければね、そのうち回ってくるから」

Suicide by cop

警察官を挑発して、射殺される、という自殺方法。

2008年9月22日月曜日

Harveyとその弟子たち

今日は学年全体の大講義があった。ASによるCHFの症例検討会だったのだが、大教授たちが何人も参加していた。その大教授たちはみな、先年亡くなった心臓(特に心音診断)の大家、Proctor Harveyの弟子たちである。この人、半世紀以上にわたってGeorgetownの名物教授。患者・学生などに対して、人柄がよいので有名だった。弟子たちはみな相当思い入れがあるらしい。

今の同級生たちは、Harveyの講義は受けていないらしいのだが、4年前に1,2年をやったときは、physical diagonsisの心臓と、生理学も教えていた気がする。授業中に心音のCDをかけて、「これが即座に診断できなくちゃね、外科だろうが精神科だろうが、医者を名乗る資格はないよ」とかいっていたような気がする。これはきっと、研究医を目指す僕にも当たる言葉のような気がする。何についても、一通り知っているのが、医者なのだから。

で授業の最後に、今年末に刊行される心音と心臓病の診察に関するHarveyの遺書の抜き刷りと、その本の付録である、数限りない心音を録音・解説したDVDが配られた。

Harvey型聴診器

LibriumとLithium

(著注:本ブログは多分に脚色を含み、詳細は、現実の症例やできごととは対応しない。)

精神科志望のAI(4年生インターン)。大手柄であった。

重度のアルコール依存症で、withdrawalで入ってきた患者だが、本来は内科に入院すべきなのに、他の合併精神疾患で精神科入院病棟の常連さんなので、ERは精神科病棟に送ってきた。アルコールのwithdrawalは、場合によっては致死性である。

で、AIが何度掛け合っても、指導医同士で掛け合っても、内科はコンサルトだけして、引き取ろうとはしない。「そんなにたいしたことはない。Librium(chlordiazepoxide)をやっとけば大丈夫。」の一本やり。通常量の倍近いLibriumでやっと症状が治まっているにもかかわらず。コンサルトもお粗末で、カルテでLibriumとLithiumを書き間違えたり(いや確かに、Lithiumも服用しているのだが)、ひどいものだった。

3日目。多分何もでないけれど、と、念のためにAIが血液検査を取ったら、入院時は正常であったALT/ASTが800。内科であわてて引き取っていった。毎日患者を見ているこっちのチームのほうが、重篤度についてはよく判断できるに決まっているのだが、この内科チームはきっと、精神科を医者とは見ていないのだろう。

その後、コンピュータで毎日その患者の予後を見守っていたのだが、原因不明の肝機能障害で酵素はさらにうなぎのぼり。内科の言うとおりLibriumを処方して退院させていたら、大変なことになっていただろう。

来年の今頃、これほどにまで、患者のケアについて貢献できているのだろうか。

Is Ms. B a Mouse?

チームのAI(4年生インターン)。一生懸命患者の治療に関連した科学論文を調べてきたのだが、「is Ms.B a mouse?」と一蹴されてしまった。指導医は冗談で言ったのだが、ことの本質を実についている。特に脳はそうだが、他の臓器についても実は、同じことが言える。

あと、指導医が言うには、「糖尿病の基準などと、DSMの精神病の基準は、基本的には同じこと。治療方針を決める上で、ある線を引いて患者を分類しなければならないのだが、その基準である。ただDSMの場合は評価基準が主観的になるだけで、本質的な相対性については内科の診断基準と大差ない」

確かに検査とかも病院やとる人の出来不出来によって変わってくることも考え合わせると、そのとおりではある。

2008年9月20日土曜日

Podría morir...

...あんた死ぬかもしれないよ

いやまあ、文字通りなんだけれども、教養ではこんないいまわし、さすがに登場しなかったな。ということで一生懸命、「医療従事者のためのスペイン語」というCDをMP3プレヤーに入れて、通勤中に練習している。本当はドイツ語の方がやばいのだが。


ある病院で産婦人科をやると、患者の大半が英語を話さない移民らしい。少しくらいできないと病歴も全くとれないよ... と同級生から聞きつけて、また少し、スペイン語でも復習してみようかというわけ。なんたるサービス精神。でも、やることの数を少し削減しないと、パンクしちゃいますね。

科学と医学

ずっと考えていることだが、試験勉強をしながらいろいろ考えた結果、基礎研究と医学の根源的な相違点が、少しはっきりした気がする。



極端に煎じ詰めると、科学というのは、結果は実をいうとどうでもよいのである。もちろん、生物やら物質やらの真理についてわかった気がするのは大変結構なことだが、それが本質的な目標ではない。ことの本質は逆に、「分からない」という状態と、その状態への対処法なのである。

たとえば、「視覚野の細胞はこれこれしかじかの刺激を受けると、これこれしかじかの反応をする」といったstatement自体は、実をいうと生理学の本質ではない。というのも、このstatementは実に多くの前提を含んでいるのだ。たとえば、どの動物種・亜種・個体を用いたか、麻酔下であるか、麻酔の有無にかかわらず記録時の睡眠サイクル、与えた刺激の詳細、刺激した際の瞳孔の状態、体温、性別、月経周期、ストレス反応などなど。あるいは、電極の種類や電極を刺す方向によっても、見つかる細胞種や記録される信号には、いろいろなバイアスがかかってくる。たとえば、「視覚野の神経細胞」と電気生理学者が言った場合は通常、大きめの錐体細胞のうち、記録条件下である程度の自発発火を有するものを指す。電極を単に刺していって探すと、そういう細胞が圧倒的に多く、捕まるからである。

この「いろいろ複雑な条件がありすぎてよくわからない」という状態への対処法が、科学の本質であろう。場合によっては実験計画を工夫することによって、あるいは場合によっては実験条件によらない因子を使っていろいろな単純かを試みつつ、仮構たるストーリーを構成する営みこそが、科学なのである。抗癌薬が発見されたり、そういうのは、ラッキーで実用的ではあっても、科学の本質ではない。



また極端に煎じ詰めると、医学というのは、結果以外は実をいうとどうでもよいのである。もちろん、生理学や薬理学の原理にかなった考え方をした方が、完全なる出鱈目よりも結果につながりやすいことは間違いないのだろうけれども、仮に仕組みはよくわからないけれどもある状況下で「治る」薬があれば、仕組みは二の次なのである。極端な例、精神科の薬なんて、大局的にみればすべてこの部類である。個体レベルで総括的に仕組みの説明できる向精神薬など、一つもないのだ。それだって、治るものは治るので、それはそれでよい。

精神科に限った話では、決してない。たとえば、アメリカ東部の郊外白人男性を対象とした心臓病研究が、どれほど、日本女性に適応できるかは、実をいうと、注意深い吟味の対象たるべきなのである。でも、それは、「研究が足りない。だから日本女性を対象とした同様の治験もしよう。」という短絡思考でおさまる問題ではない。人間が研究室のラットたちのように均質ではないところに、その問題の根源があるわけで(近親交配ラットだって多様な面もあるのだが)、まして気の遠くなるほど交絡因子を有するヒト個人を対象とする限り、根本からいうと、頭でっかちの単純化をとおして解消できる問題では、決してないのだ。100万人を対象に治験を行っても、100万と1人目の人も、治療しなくてはならない。



仮に試験でたとえれば、A-Eのうち、「もっとも適切と考えられるものを選べ」というのが医学、かならず一つの真理に到達しなければならない。一方、「A-Eのそれぞれの真偽について多角的に検討せよ」というのが科学なのだろう、真理が一様であるとは限らない。

手元にあるエビデンスに照らし続けるにせよ、「最終的に何をするのかという決断」、つまり見切り発車こそが、医学の本質である。ところが、いろいろなエビデンスをいつまでも集め続けて、「ああでもないこうでもない」と結論を引き延ばすことこそ、科学の本質である。



ある研究医の中国人友人は、中国では、医者を大工に喩えるのだという。その状況その状況で、もっとも適切な棚なら棚を時間内にこしらえるのが、その職人技。もちろん棚の出来不出来は腕により異なるが、使える棚ができることが、一番の要請である。

そのたとえでいけば、科学はもっと前衛芸術のようなものなのであろう。使えるものができるかどうかは、はっきり言って、どうでもよいのだ。いつになったら完成するのかわからないそのオブジェの全体像が、人間の美感にかなっていることこそ、重要である。

2008年9月19日金曜日

精神科入院病棟 最終日

チーフレジデントが、ベーグルとコーヒーを買ってきて、病棟チームみんなで朝の引き継ぎ前に朝食パーティー。とっても充実した一ヶ月であったし、色々学ぶことができた。また、教室で精神科の授業を受けるのと違い、目の前に患者がいて、薬を出したりしていて、やっと精神科では何をやっているのか、わかってきた気がする。その意味では、学習目標達成といってよかろう。あとは、試験。

2008年9月18日木曜日

Manic first break ambulatory EEG

catch gradual process of mood stabilization and sleep

2008年9月17日水曜日

Personality disorders

患者と接することの多い病棟スタッフは、瞬時にpersonality disorderやtraitを診断することができる。きっと町中を歩いていても、そんなことがいつも頭をよぎったりするのではないだろうか。

だから学生とかも瞬間的に好かれたり嫌われたりするのだろうか。

Hepatic encephalopathy

昼夜逆転

2008年9月16日火曜日

Self-pleasure mode

On callのポケベルは、一番うるさい着信音に設定してある。ある忙しい日に、鳴り続けていてとうとう頭にきたレジデントが、チーフレジデントに向かって、「これ、いつもうるさいわよね。ねえ、self-pleasure modeに変えちゃだめ?」だって。ヴァイブ設定のこと... 精神科の入院病棟チームは今、完全に男一人なので、時々、まるで女子校の教室にぽつりと一人座っているような気分になる。

あと、いろいろなポケベルのメロディーにそれぞれ、お下品な替え歌があるらしい。内科のインターンでポケベルに追われて当直をしていると、そういう替え歌が頭に浮かぶのだそうだ。

ニューヨークあたりはいま...

アメリカ経済(国際経済?)は倒壊の瀬戸際をうろうろしているが、今日病棟で投資銀行の人たちが話題になった。

「あら、大学の同級生でもいたわ、投資銀行に勤めるんだといって浮かれていた人。」
「今頃になってみんな首だわ~!」
「医者は10年近くもトレーニングが必要な割には給料も高くないし、勤務も厳しいけれど、職業の安定としてはやっぱり一番かもしれないわね。」
「今頃、ニューヨークあたりの精神科はこれから大変じゃないかしら?Lehmanとかに勤めていたnarcissistたちがみんな一斉に鬱とかになるでしょうから。」

これ、このままいくと、ニューヨークに限った問題で収まるかは、まったく不明ではあるが。

そういえば、時事的な発症とか、時期的な発症とかはよくあるみたい。たとえば僕らの精神科の一ヶ月はちょうど8月末から9月末で、ちょうど新学期にあたった。だから、躁のfirst breakの症例もいくつか見ることができた。あと、開業精神科医は8月あたりに休暇をとることが多く、普段の精神科治療が途切れてしまったことから悪化して入院する患者も何人か、いた。

FD12

常連患者。極端な人格障害で、地域中の精神科病棟を遍歴して暮らしている、という意味では悲劇的でもある。「テディーベア兆候」陽性(人格障害に伴う子供帰りというか、人格形成不全というか)。もう何10回も入院していて、前回は二ヶ月近く居座ったという。Suicidal ideationさえ示せば、いつまでも居座れることを知っている。もっとも、すでに何回も相当深刻な自殺未遂を行っているので、冗談とばかりにはいかない。

でもさすがに病棟のルールを取り締まろうとするスタッフを蹴ったり、相手にしてもらえないからと朝から晩まで阿鼻叫喚して病棟のほかの患者の精神衛生を乱したりすると、チーフレジデントが黙ってはいない。容赦なく、あっけなく、FD12という強制入院手続きを済ませて、securityの守衛さんたちによって担架に括り付けられて、haldolを打たれて、地域の精神科強制入院病棟を有する病院に送られていった。

チーフレジデントによると、ありとあらゆる境界性人格のなかでも、もっともひどいという。日がな大声で嗚咽が聞こえてくるのは、いかにも「精神科入院病棟」といった1日半ではあったが、病棟中みんなぴりぴりしていて、いやだった。

納豆

納豆の朝食はおいしくて体にもよいが、ちょっと控えた方がよさそうだ。今日は一日中、朝の歯磨きにもかかわらず、口から枯草菌のにおいが。一生懸命ガムを噛んだり、うがいをしたりしていたのだが、口に納豆味ガムの感覚が残る。

2008年9月15日月曜日

ラッキー

来週からの内科チーム割り当てが発表になった。また別の、同級生レジデントになりそうだ。あと、精神科の入院病棟で今も一緒の美人同級生と二人でチームに配属。

Manic episodes and sleep

What about the manic brain state allows homeostasis with less sleep?

2008年9月14日日曜日

Autism and lateralization

Physically, autistic children have a variety of soft neurological signs and primitive reflexes, an excess of non-right-handedness, and an apparent failure to achieve normal cerebral dominance of language functions in the left hemisphere.

Myelination disorder.

ゆく川の流れは絶えずして

金曜日早朝、ドイツの共同研究者とデータについてSkypeしていて気づいたのだが、まだ、ドイツから帰国して、1ヶ月しかたたない。実感としてはもう、数ヶ月はやっている気がする。短いような、長いような、不思議な一年になりそうだ。

今週は病棟が暇だったので、いろいろな知り合いの先生のところを回って、相談などした。話すにつけ、やっぱり、僕は、たぶん、基礎研究がしたいのである。

2008年9月13日土曜日

Asshole NOS

ある患者の退院書類を準備していて、レジデントに、最終診断は何にしましょう、と聞いたら、「Asshole NOS」だって。ワッハッハ。(NOS=not otherwise specified、DSM分類の中で、たとえば診断のはっきりしない情緒障害は、mood disorder NOSなどとなる)

本当に今週はしんどかった。この患者、悪性の覚醒剤の長期乱用で、脳はきっとどろどろに溶けているのだ。でも、人間というのは恐ろしいもので、一見するとふつうに振る舞えるのだ。じっくり込み入った話を聞き出してはじめて、妄想などの酷さがわかる。あと、回診の時は必ず、30秒以内に泣き出す。あまり科学的ではないとらえ方をすると、大脳による制御が解けて、動物的な原初感情があらわになっているのかもしれない。

で、チーム全体で一生懸命よかれとしていることも、あまり受け入れない。覚醒剤で頭どろどろのくせに、出した薬は「頭がおかしくなるから」と拒む。確かに向精神薬はある意味、怖い部分もあるのだが、薬というのは一般的にどれも怖いわけで、それを承知の上で、何もしないよりはよっぽどましだから、と出しているのだ。もうしばらく安定させてからの退院、という予定だったのだが、AMA(against medical advice医者の勧めに反しての退院)で出て行くという。まあ、voluntaryの病棟なので、強制的に入院を継続させたり、ベッドに縛り付けたりするようなことは、しない(できない)のだ。

完全に頭をやられているならいざ知らず、時々、健常に見えるだけに、僕のようなナイーヴな医学生は頭と気持ちを撹乱されて、しんどいのかもしれない。

でなんとか、物質依存の治療施設を紹介して、たぶん処方した薬についてもその重要性をわかってもらえた気はするのだが(気の遠くなるほどの回数、説得した挙げ句)、できる限りのことはした今となってはもう、悪いけれど、さっさと出て行ってほしい。本当はこういう患者じゃなくて、愉快な躁患者とかを、受け持ちたいのだ。

Passive Death Wishはおあり?

朝の引き継ぎで、レジデント・看護師・学生が集まって話しているところに、病棟の経理係のオバチャンがきた。入院患者の一人について、保険屋が払わないと言いだしたらしい。

アメリカの崩壊した医療保険システムでは、病院から健康保険会社に対して請求した医療費が、すべて帰ってくるとは限らない。保険屋によっては、勝手に値引きしたり、これとこれは払わない、などと勝手なことを言い出す。まあ、民間の保険会社は商売なのだから、重病人には死んでもらうのが一番いいに決まっているのだが、商売ではなく医療に携わる病院側としては、そういうわけにもいかない。特に精神科については、偏見が根強いようで、保険交渉も一般病棟とは別だったりして、支払い率が低いようだ。

だから、経理のおばちゃんによると、「カルテを書くときは、もしも物質依存とそのほかの精神疾患が合併している場合は、かならず一番目の診断は精神疾患の方にしてくださいね」だって。物質依存は、分裂病や鬱や躁鬱などに比べ、一段と蔑視の度合いが高いのだという。

「あと、できることなら、passive death wish(求死願望とでもいうのか?自殺するほどではないけれど、事故か病気か何かで死んでしまえばいいのにな~と思うこと。)も聞き出せると最高ですわ」と。もちろん冗談。みんなでワッハッハ。でも、日がな保険会社とfightしていると、そんな冗談の一つもいいたくなるのだろう。

2008年9月10日水曜日

Brahmsの鑑別

大体BrahmsのCDをかけ始めると、軽躁気味の兆候。あるいは、コーヒーの飲み過ぎなだけかも知れない。
麻酔科・外科のカルテを使った臨床研究などが、頭の中を駆けめぐる。

Physical examinationビデオ講義

早くも後1.5週間で精神科は終わり。次なる関門は、3ヶ月の内科。Georgetown入院病棟で1ヶ月、地域の医院で外来1ヶ月、関連病院の入院病棟で1ヶ月。

精神科から救急に送られて、ざっと診察するだけでもあたふたしているのに、このままだと内科はヤバイ。第一、聴診器とかそういう授業はM2でやったが、もう、5年近く前の話。で、Georgetownの内科は特に診察に関しては厳しいといわれる。そこら辺、何とかしなくてはならない。



ちょっと前に知ったのだが、便利なことに、Physical Diagnosisの手ほどきビデオが無料で視聴できる。ごく普通のphysical diagnosisの講義だが、復習にちょうどよい。あと日本の学生の方は、留学の際に特にこういうのが参考になるのかもしれない。

あと、医学部で学んだことのない方は、解剖のビデオとかもあるので、おもしろいと感じる方もあるかもしれない。ただ、あの臭いと、人体がモノとなった触感は、なかなかビデオでは伝わらないのではあるが。

2008年9月9日火曜日

怖い話

今日は指導医が急な外来か何かで遅れる、というので、朝のシフト交代から10時頃まで暇だった。ので、チームみんなで食堂にいってゆっくり朝食をした。

で、ちょっと変な病歴の患者が入ってきていたので、そこから発展して、いろいろとおもしろい話を聞くことができた。チーフレジデントが、こういう話、とっても好きなのだ。ビール瓶を飲み込んだ患者の話や、膣部にナイフを挿入して自殺を図った患者や、trazodone(Desyrel)による持続勃起症によって救急に運ばれた患者(海面体へ、epinephrine注射?!)の話や、経尿道的な性交の話になった。

この経尿道的な性交、もちろん異常性癖ではあるが、同性愛男性に時々みられるらしい。解剖学的に考えて、どうしたらそんなことができるのかはちょっと不明だが(「うん、きっと、Foleyの延長なんでしょ。首長族とかみたいに、少しずつだと思うわ」)、尿路感染症・尿失禁など、大変なことになりそうだ。で、チーフレジデント以下、僕以外全員女性なので、それに関するジョークはちょっとキツかった。精神科にいると、変な行動をいろいろみる、というのと、冗談でも言っていないとこっちのバランス感覚がおかしくなってしまう、という面もあるだろう。

そういえば、チーフレジデントは今日チーム全体をさして、間違えて、「ladies」だって。もちろん、普通に「guys」とかいうのも本来は男性なわけだが、現在では中性用法も一般化している。それを考えると、女性の方が多いので「ladies」でもよいのだろうけれど、まあチーフレジデントは僕と目をあわせるなり、慌てて「and gentlemen」と付け加えた。

プラスチック社会(追)

長くいて患者をよく知っている看護師によると、この患者はクレジットカードを使って町中のホテルに泊まり逃げをしているらしい。住所もないのに、クレジットカードを手に入れることができる。もちろん、カードは払わずに使い倒し。

どう考えても、全く、変な話だ。

アル中

10日間、朝から晩まで飲み続け。飲んでは倒れ、飲んでは倒れ。ついにお金がつきて、うがい薬(アルコール25%)。

これ、正真正銘の、dependence。

2008年9月8日月曜日

プラスチック社会

ホームレスの人がナースステーションで持ち物を広げていたら、クレジットカード(信用卡)が10個くらい、バラバラ、と出てきた。それ、どういうこと???

Parole officer

PO

「 PO=per os 経口投与 」かと思いきや、ankle bracelet云々。よく読むと、「PO = Parole officer(仮釈放囚人の監視官)」ということらしい。囚人の居場所を監視するために、踵に追跡のための電波発生ブレスレットをしている、ということ。

2008年9月6日土曜日

Path, Neuro, Radiology

同級生レジデントと話していたら、どうやら僕は、病理・神経内科・放射線科のタイプなのだそうだ。

2008年9月4日木曜日

Homicidal Ideation

入院病棟の隣のチームのattendingがお休みなので、精神科の他のattendingがカバーしている。ところがこの代理attending、回診が恐ろしく遅く、評判がとても悪い。でこの問題のattending、宗教上の理由から、妊娠中絶を希望する妊婦を、他殺企図とみなしているらしい。

もちろん、カトリックの教えに従えば、受精の時点から生命が始まるので、中絶は殺人に当たる。事実、うちの大学はカトリックなので、大学病院では中絶目的のD&Cは行っていない。でも今日はresidentたちが顔をつき合わせて、「あのattending、中絶希望の患者を他殺企図あり、ということで強制入院しようとしている...」と本気で心配していた。これ、果たして、合法なのだろうか?

その勢いでいったら本来、今、共和党の党大会で国粋主義的なスローガンを唱えている馬鹿たちも、強制入院させるべきかもしれない。しかもこちらは、石油利権だかなんだかをめぐって、胎児ばかりか、一般市民、婦女をも殺そうという人たちである。

まあ宗教的な原理主義者にありがちなように、そのattendingはたとえば離婚しているのだ(これまたカトリックの教えに大幅に反する)。アメリカには、人間の性悪な面と、善悪の相対性をまったく理解しない馬鹿が、実に多すぎるのだ。本当はそういうのは、中学高校あたりで、卒業すべきであろう。

救急にて

ちなみに今日は午後、PGY-2のレジデントたちが講義でいなくなったこともあって、恐ろしく忙しかった。で、救急に患者を入院させにいったのだが、そこでも4年前の同級生を一人目撃。立派にレジデント然としてふるまっている。この先、こういうこともたくさんあるのだろう。



その救急の患者さんは、いわゆる「frequent flyer」。飛行機会社のマイルではないが、要するに、精神科病棟の常連さん。コカインとアルコールでハッピーになって入ってきた。まあ、ヒトのよいハッピーなオッチャンなのだが、電子カルテに載っている分だけでも10回ちかく入院している。なんだかhopelessな気がして、レジデントに入院の治療目標をたずねたら、「安楽死」ですって。もちろん、冗談。でもこのレジデントは人一倍思いやりがあって、患者のあしらい方もうまくて、しかも患者の人気も高いのだが、それだからこそ、そういう冗談でも言っていないとやっていられない。その気分が、少しだけれどわかる気がする。何度ケアしても同じ状態で戻ってくる。これでは、どうしても、むなしいよね。

まだハッピーなだけ、よい。これが鬱とか、もっとひどいのはcluster Bっぽい人格障害たっだりすると、もうやってられない。

でそのハッピーなオッチャンは薬の密売場所(クラック・ハウス)の見張りをすることで、コカインを手に入れるのだという。そんな怖い職業では、麻薬のひとつもやっていないと気が狂ってってしまう。(あれ、なんだか話が親子丼に?でも疲れていて考える気力がわかないから、とりあえずそういうことにしておく)

Borderline

入院患者の数も徐々に増えてきて、いろいろ仕事が増えてきた。

退院の際に社会福祉団体やグループホームなどの世話をしなければならない患者が多い(つまり社会的に機能できない患者で家族のサポートがない場合)。で、そういう仕事は金にならないから病院経営側はきちんとしたケースマネージャーを病棟につけない。結局は医学生が奔走することになる。



あと昨日は何人かいるborderlineの患者の一人がroundsの際に特にひどく、attendingに噛み付いた(not literally)ので、もちろんattendingはクールにうまくあしらったのだが、慣れないこちらは気分が悪くてしょうがない。あるいは、何食わぬ顔で偽病の患者など。信じちゃったよ。はじめはattendingやresidentが偽病だと決め付ける理由が、わからなかった。

でちょっとあまりに気分が重いので、大学院の友人を誘ってのみにいっちゃった。今日はおかげでちょっと眠いけれども気分は晴れた。

2008年9月3日水曜日

病院禁煙

来る11月20日より、大学病院全体が禁煙となるらしい。駐車場含め、構内すべて。指定喫煙所も、すべて取り壊し。

これは患者を退けることになるのではないか、と心配もある。たとえば、分裂病患者のように、自己投薬のような意味での喫煙率が非常に高い疾患群もいくつかあるのだが、そんなこんなで精神科では特に心配していた。

あと、医者とか看護士とかでも、意外と多いんですよね。

2008年9月2日火曜日

同級生レジデント

今日からレジデントのシフト交替である。今度うちのチームのレジデントは、実をいうとメディカルスクールの1,2年の時の同級生(2006年卒)。内科研修を1年やってから精神科に転向したので、卒業3年目でも、精神科ではPGY-2。しばらく当時の同級生の話などをして、不思議な気分であった。

アメリカでは、家族の地理的な事情などがない限りは、大学を卒業して研修はよその大学に移るのが普通で、理想とされる。でもまあ当時の同級生の何人かは居残っているので、これからもレジデントとして師事することになるだろう。

MD/PhDというのは、こういう面でもちょっと不思議だ。

2008年9月1日月曜日

今後の予定

Humboldt財団の研究員に任命されたので、また来年夏には、ドイツに数ヶ月戻れそうである。金曜に学生部長(?)みたいな教授と話したら、実に前向き。ただ、2010年度のマッチは、参加できないことになりそうだ。これから、学生委員会にまたカリキュラム変更のrequestを書かなければならない。

で研究がうまくいっていたら、そのまま2010年夏~秋に卒業後、そのままポスドク。研究がうまくいっていなかったら(仮にその時点での筆頭著者引用点数が、30を超えない見込みだったら、と定義しよう)、2011年のマッチに参加することになる。

もしも2011年のマッチに参加する場合は、2010年度は一年間、ぼちぼち研究とレジデンシーの面接を進めながら、サマーコースやAway Rotation三昧でいろいろな科、いろいろな大学を体験できることになりそうだ。日本でもどこか、1ヶ月くらい置いてもらえないだろうか。あるいは、ドイツも面白いかもしれない。

本当は研究が一番したいのだが、↑も結構、面白いかもしれない。