2008年10月30日木曜日

Rigor mortis

今日は月末で、給料日恒例の寿司の日。近所の寿司屋の若大将と話していたら、プリプリした鮮度のいいホタテの話から、魚の鮮度と死後硬直の話になった。

貝類は総じて、死後すぐにぬめぬめして食感が失われるという。一方魚は、取れたてしばらくは死後硬直が激しくて、むしろ食感が悪いそうだ。で、凍らしたり、脊髄に針金を通したりすると、死後硬直の具合がまったく変わるという。

基本的には神経細胞は比較的すぐに死んでしまうのだが、殺してすぐに脊髄に針金を通すことで死後硬直が変わってくるとしたら、神経科学の観点からも面白い可能性がある。それは、脊柱の神経を瞬時に抹殺することによるのか、それとも、末梢神経をうまい具合に発火させることによるのか。あと、僕自身学部の出身が農学系なので、いずれ暇があったら、畜産・水産とからめてそんな死後硬直の研究をするのも、若干morbidだが面白いかもしれない。文献を探して、先行研究がなければ、の話ではあるが。

2008年10月29日水曜日

旅医者

今日は外来クリニックで働いている家庭医のおじいさんと昼食をした。20年間開業医をしてから、計20年ほど世界中で働いた。南米、アフリカ、フィリピン、西欧、ロシア、オーストラリア、日本にも行く可能性があったそうだ。医者ならではの人生といえよう。

臨床をするのだったら、そんな生き方も面白いのだろう。

2008年10月27日月曜日

Hospice 訪問

今日はhospice訪問。Social workerといっしょに患者訪問に出かけた。「死にゆく人を助ける」というのは、何とも不思議な営みだ。まあでもある意味、人は全て、terminalな訳であって、医療の本質がそこにある、ともいえなくもない。生活習慣病などは特にそうだが。

保険が下りるよう、腕の外周などを注意深くカルテに記録するそうだ。体重が増え始めると、保険会社から支払いが止まるのだそうだ。Hospiceを始めると病状の進行が小康状態となることがあるが、そういうふうに明確に下り坂ではない人は、hospiceの対象にはならない。それも、保険会社からの支払いが止まってしまう。だから経済的にはまるで、病状の進行が目的、のような本末転倒な状態にもとれてしまう。まあ、市場主義的保険制度にあっては、無理もない話だが。

2008年10月26日日曜日

アメリカ、大丈夫?

これからアメリカは、当面、先の見えない闇に突入する。金融危機と貯蓄率の低さによる国家財政危機は、いうまでもない。自由市場主義による国内産業の空洞化による、失業率の高騰も、まあ、当然のことである。

暫く収拾のついていた治安悪化だが、これも、これからどうなるかは知れている。ただでさえ、日本や諸先進国とは比較するとまるで冗談のように世情の不安定な国である。たとえばワシントンDC。国会議事堂のすぐ裏手、町の南東の一角は事実上、立入禁止地区である。その一角に迷い込んで射殺されたとしても、だれも、同情してはくれない。これ、まさに、第3世界である。



問題はそれらのみですむわけではない。医療システム・教育研究システムも、危機に瀕している。だが、数ヶ月前の金融界と同様の状況であって、医療システム・教育研究システムの危機には、気づかない人・気づかないふりをしている人が、ほとんどなのではある。

医療。国民の6.5人に一人が、無保険者。残りの85%とて、中産階級以下では、ろくな保険ではない人がほとんど。たとえば卑近な話、奨学金とともに支給されている学生保険は、大病をしたら、すぐに吹き飛んでしまうような支払い上限だ。より深刻な問題としては、完全市場主義的な保険から、予防医療に対する社会的な取り組みがほとんど皆無であることも、これから、つけとして跳ね返ってくる問題である。金融の行き詰まりと、構図は酷似する。

すでに、前兆は、はっきり現れている。たとえば、昨今の経済混乱の下、病院の半数以上は、破産または破産寸前の状態にあるという。無保険者が救急に転がり込んできたり、あるいは保険のある患者でも、民間保険会社の、医療機関に対する支払い率の低さから、まあこの病院倒産も、不思議はない(保険会社が、手前勝手に、値引きしたりするのである)。だが、医療という行為は、本質的に、金儲けという行為とは、矛盾している、だから社会単位で補わなければ、話にもならない。

しかも、この惨状は、ほかの先進諸国に比べ、国民あたり2倍近い出費をした上でのはなしである。本質的に、根腐れしているのだ。



教育研究。アメリカの教育は世界に冠たるものとされるが、それは、大学・大学院の話。高校以下は、一部の私学や裕福な自治体を除いては、燦たる状況である。だから、アメリカの研究教育を支えているのは、あくまでも、ガイジン1世・2世である。この状況は、戦中に逃亡してきたユダヤ人学者たちに始まり、アメリカン・アカデミア勃興の、陰の姿ではある。で、このたびの金融危機で科学研究費が大打撃を受けることは目に見えているので、この象牙の塔も、意外ともろく崩れ去る可能性すら、ある。

たとえば、生物系の研究費のほとんどを支給しているNIHは、このたび、研究費の再提出回数を、今までの2回から、1回に削減した。研究費申請がどんどん博打化するなかで、本質的に意味のある研究が廃れゆくことは、目に見えている。ノーベル賞にしても、アメリカが遠ざかっていくのも、無理はない。アメリカの賞とて、過去の爺様ばかりである。本質的に意味のある研究は、研究費につながるような「打ち上げ花火型」の研究とは、異なる次元にあるのだ。この傾向が進む可能性も、強いと見る。



こうして、アメリカの世紀は、終わってしまうのであろうか。

あるいは露落ちて花残れり。残るといへども朝日に枯れぬ。あるいは花しぼみて露なほ消えず。消えずといへども夕べを待つことなし。

2008年10月25日土曜日

薬品名しりとり

製薬会社が新薬を発表するときには、商売の都合上、brand nameは覚えやすく、generic nameは覚えにくいような命名をしているという。Genericは製薬会社の天敵なのであろう。そんなこともあって、臨床の現場では、よほどacademicな人をのぞいては通常、薬品はbrand nameで呼ばれている。患者に対するテレビ広告(!!!)や啓蒙(?)資料なども、すべて、brand name。

だが、academicな場では、必ず、generic nameが使われる。治験論文やUSMLE、shelf試験などは、generic nameを知らないと、話にならない。よって、哀れな医学生は必ず両方を頭にたたき込まなくてはならない。

特に売れ筋の薬(つまり慢性病で一生涯死ぬまでお客さんの薬)は、flashyな命名だしいろいろな競合薬が飛び交って、大変である。たとえば高脂血症の薬(atorvastatin/LIPITOR, lovastatin/MEVACOR, pravastatin/PRAVACHOL, rosuvastatin/CRESTOR, simvastatin/ZOCORなど)、睡眠薬(zolpidem/AMBIEN, zalepon/SONATA, eszopiclone/LUNESTAなど)、insulin製剤(HUMALOG, NOVOLOG, HUMULIN, NOVOLIN, ULTRALENTE, LANTUS)、セロトニン再吸収阻害抗鬱薬(citalopram/CELEXA, escitalopram/LEXAPRO, fluoxetine/PROZAC, fluvoxamine/LUVOX, paroxetine/PAXIL, sertraline/ZOLOFTなど)。こんな類のよく使われる薬はどれも、口をついて「generic⇔brand」翻訳できなくてはならない。当然それぞれの特質についても概要を知っていないと、困ったりもする。

さらに困ったことに、brand nameは国際的にほとんど統一されていないし、最近では混合製剤に新たに名前をつけたりしているから、これは、大変なことだ。向精神薬を服んでいなくとも、薬屋に、頭をはちゃめちゃに掻き回されているのだ。

PITA

(著注:本ブログは多分に脚色を含み、詳細は、現実の症例やできごととは対応しない。)

中近東の平たいパンのことではない。Pain In The Ass (用例、That patient is such a PITA!)。

2008年10月24日金曜日

Burqaと骨粗鬆症

(著注:本ブログは多分に脚色を含み、詳細は、現実の症例やできごととは対応しない。)


イスラム教の女性の伝統衣装、burqa(hijab)。これを生涯まとっている女性は、日光の作用のもと皮膚で合成されるビタミンDが不足して、恐ろしく悪性のburka osteoporosisになるらしい。

こんなのが臨床でみられる、アメリカという国は、実に、坩堝である。

1st finger ≠ index finger

第一指、第二指、などという呼称は、推奨されていないらしい。というのも、たとえば第一指といわれて、間違えて親指ではなく人指し指を切断した外科医が、実存するというのだ。いるばかりではなく、手術箇所の間違いの6割以上が、指のとり違いだという。だから、指はthumb, index finger (forefinger), middle finger, ring finger, little fingerと呼ぶことが、一般に推奨されているらしい。

○○につける薬は?

(著注:本ブログは多分に脚色を含み、詳細は、現実の症例やできごととは対応しない。)

あのね、林檎アレルギーがあるのならね、林檎は食べない方がいいんじゃない?
あのね、貧血気味で月のものが多いんだったら、献血はしない方がいいんじゃない?
あのね、膝の靭帯炎なんだったらさ、マラソンはよしといた方がいいんじゃない?

アメリカ人たちの中には、時折、恐ろしく非常識な人が混じっていたりするらしい。 この外来にくる人たち、自分を不死身の鉄人と思いこんでいるふしがある。そういうのは、心理学の枠組みでは、思春期の思考形態に、属する。あっ、そうか、このひとたち、実年齢もほとんどまだ、思春期だったりも、するのだ。

2008年10月22日水曜日

Dr. Takagaki

大学病院内科チームのレジデントは、博士課程を始める前の、メディカルスクール1,2年の同級生。で、新患の回診の時には、「こちら学生のDr. Takagaki」と紹介している。まあたしかに博士はとったので、technically correctではあるのだが、100% correctではない。普通は「student doctor」という誤魔化しかたがもっとも一般的だが(あるいは開き直って「medical student」)、「student doctor」とて、ちょっと違う。まあ、日本で学生を「先生」と呼ぶのと、同じようなものだと考えればよいのか?

内科外来

今月は内科外来。クラスの一人一人が地域の医院などに散らばって、働いている。僕はメトロ(ワシントンDCの地下鉄)に乗って、ある公的施設の付属医院に通っている。公的施設はどこもそうだが、毎朝、機関銃の間をかいくぐって、飛行場も顔負けの荷物検査。いろいろと面白い1ヶ月になりそうだが、ここに書くのはよします。そんなこんなで、今月は殆ど、過去の書き残しの記事だけになるかもしれません。

2008年10月21日火曜日

チーム医療の限界

(著注:本ブログは多分に脚色を含み、詳細は、現実の症例やできごととは対応しない。)

今日は緩和医療のコンサルト・サービスと回診した。

で、ある患者さんのカルテを見ていたNPが、あら、降圧薬、また○○に変えたわ。この人の血圧には効かないのにね。もう3回目だわ。

何ヶ月も居座っている患者さんだと、病棟チームの交代のたびに同じような試行が繰り返されたりするようだ。Sign offがいくら丁寧でも、無理なものは無理だし、忙しい中、細かいことまではかまっていられない。

Clinical websites

アップデートしました

Cardiology
●●●●○ http://www.blaufuss.org/... EKG, heart sounds
●●●●○ ECG Web-Maven

Radiology
●●●●○ Learning Radiology
●●○○○ Lieberman's eRadiology

General
●●●●○ Medfools... メモ用の雛形など
●●○○○ Learners' TV
●○○○○ Connecticut Tutorials

2008年10月20日月曜日

カルテは簡潔に

指導医にHistory and Physicalの講評をいただいた。

丁寧によくかけているが、文学的すぎるとのこと。「学生のノートはたいてい、一番丁寧によく書けていて、historyとかも意外な発見があったりするんだけれども、長すぎると誰も読まないでしょ。」だから、次は、文章をぎゅっと必要最小限に引き締めることが、目標だそうだ。

NEJMのケースレポートなんかは、複雑な症例をうまく簡潔にまとめているから、日頃から読んで参考にするとよいそうだ。

Better gastric pacing

Ham O/D

ハム中毒。Christmas(やThanksgiving)にハムを食べ過ぎて、塩分で心不全が悪化する。

2008年10月17日金曜日

大学病院内科 最終日

今月は多くのことを頭に詰め込んだ。別に病人は、嫌ではない。学生でも少々は役に立つ、特に病人に近い目線だし、受け持ちも少ないので時間をかけて話を聞けるし、いろいろと説明したり、考えたりもできる。それも、悪い気はしない。

だが、ひとつよくわかったことは、僕にとっては研究室で研究をしていないことは、限りない苦痛である、ということ。大学に入って以来、研究室から遠かったことは、一度もない。親の背中を見ながら研究室を駆け回った少年時代も含めると、その空気なしには息苦しくなることも、不思議ではない。

で、本質的に重要な基礎研究と、臨床をすることとは、本質的に矛盾する。そこらへんはいずれゆっくり議論をまとめたいところだが、まあ、哲学的な矛盾はさておき、競争の厳しい現代における、しかも情報爆発の渦中にある若いキャリアにおいては、まず、時間的制約からして矛盾している。

あきらかに現代は、人間の手に負えない情報量があふれかえっている。でも、それに対応すべき新しい医学も、新しい科学も、未だ生まれてはいない。基本的には、かつての老人たちと同様な振る舞いで、何十倍という情報量を繰ることが、一線では求められるのだ。特定分野において、それが無理であれば、二束のわらじは、さらに、無理というもの。

女学生 vs. ナース

女子学生たちと立ち話していたら、「XX病棟の看護婦さん、意地悪だよね~」とかいうはなしになった。「そうかなあ、僕はいい経験しかないんだけれど。」とかいったら、ほかからも次々と、意地悪された経験談が次々と出てくる。

ふと気づいたように、「あら、きっと、高垣君は男だからじゃないかしら、看護婦さんは女子学生とは対抗意識があるんじゃないかしら、きっと」(激的意訳)「そういえば、男子の医学生には、媚びているような気がするわ。」女子学生一同、得心。

そんなもんなんだね。「看護婦さんみんな親切~!」なんていうのは相当脳天気だったらしい。一回だけ、オバチャン看護婦さんに変なことを言われたが、素知らぬ顔をして質問を続けたら、いつの間に普通の会話に変わった。体から発する気(qi)が重要なのかもしれない。

そういえば今日患者さんと病室で話していたら、消化器内科回診のご来光があった。指導医が先頭に立っていたのだが、僕には一言もいわないのだが、気で患者との会話をinterruptされて、かつ、押しのけられてしまった。まあ、こんな感じのほうが、「メディカルスクール」っぽいわけだが、学生とか看護師とか、「下々」に対して気配りのない医師が、必ず、ある一定数は、いる。病気で参っているところに、こんな人にオシリからカメラを突っ込まれた日には、かなわない。

疲労

早朝はドイツと研究の打ち合わせなど、夜は勉強、朝から晩まで病棟。よく考えれば、一日4時間を切っていた。それは疲れるわけだ。月曜からは外来なので、おそらく9時5時チックな日々になろう。同じチームの学生に、もうちょっと寝た方がいいんじゃないの、と、3回もいわれたら、間違いなく、体がついて行っていないのだろう。

ああそういえば、糞詰まりだったドイツ第1号論文が、not badなジャーナルに通り気味の気配。本質的にはmethods paperで、分野全体の実験手法の重大な落とし穴を指摘した挑発論文としては、上出来。

2008年10月13日月曜日

Antiemetic vagal nerve stimulator

Subdonal Hematuna

(著注:本ブログは多分に脚色を含み、詳細は、現実の症例やできごととは対応しない。)

大学病院のシステムでは、名前とともに一行で主な病名が表示されるようになっている。ただ、病棟の事務員が入力するので、恐ろしくいい加減なことがある。先日は、subdonal hematunaの患者を担当した。こういわれると、硬膜下出血も、美味しそうな感じ。日本の病院の事務だったら、絶対にそんないい加減なことは起きない気がするのだが。

あと、文字ではなくICD-9コードが出ていたら、たいてい、Stigmaのある疾患。たとえば042で始まるコードはHIV/AIDS。どうしても患者の目に触れてしまう可能性があるため、病名は伏せてあるのだろう。

2008年10月12日日曜日

病院って不潔

ポケットにいろいろ詰め込んで一日中走り回っていると、白衣がすぐに薄汚くなってしまう。注意深くみると、一週間で相当汚い(図)。

この汚れ、なかなかとれないし、白衣は意外とアイロンも難しい。でも、クリーニングに出すと「ジャケット」という値段、8ドルくらい取られる。だからクリーニング代も馬鹿にならない。レジデントでも、注意深くみると、そこに気を払っている人と気を払っていない人と、一目瞭然である。

今週の総括

今週はしんどかった。ちょうど、いかに無知であるかがわかる程度にいろいろ知恵がついてきた感じ。で、夜遅くまで勉強しすぎて、昼のカンファレンスなどでは居眠り連発。

あと、アメリカの国状とともに世界が、どんどん凋落の一途である中、世界の首都におけるZeitgeistもただならぬものがある。缶詰を買い込んだり。アメリカ人は貯蓄率が低くてその日暮らしが多いので(あるいは、カード暮らし?)、外食産業などはじめ、急に相当な不景気だという。別に店をやっていなくても、肌で感じる。そういうのって、関係ないようでいて、意外と精神衛生を害する原因となる。

あと、PalmにUpToDateを導入したので、回診中や移動中など、少しずつ勉強できて好適ではあるが、研究の方もミニbreakthroughになりそうなお膳立てができたので、本当はそっちにももっとエネルギーを費やしたい。

USMLE Step1 廃止(3)

USMLE Step1 廃止
追、USMLE Step1 廃止

当座、臨床への興味が薄れてきたので、最近の動きをあまりフォローしていなかったのですが、コメントがあったのでUpdateです。改革計画は少々遅れをとりながらも検討は着実に進んでいるようです。いまのところでは、改革は早くとも、2012年、ということになっているそうです(以前は2011年以降から、ということであった)。今までのカリキュラムのなかで、Step 1は重要な役割を占めてきたため (たとえば、Step 1を進級判定にもちいたり、マッチの脚きり基準となったり)、なかなか、容易には変更できないのが、現状のようです。

変革の要点は特に、臨床と基礎の複合問題を多く作成することと、Step 2 CSが医学生に強いている財政負担を軽減することに焦点が当てられているようです。1点目については、USMLEの問題作成にかかわっている先生方も、徐々にそういう動きが準備されているようです。

また、情報が手に入れば、ご報告します。



参考リンク
USMLE サイト
解説記事 1
解説記事 2

2008年10月10日金曜日

Rectal exam

恐怖のdigital rectal exam。

触診と、潜血のGUAIAC検査。5年前の模擬患者を使った実習以来、実をいうとやったことがないので、練習したい気持ちもあったにはあった。だが、患者が強硬に拒んで、レジデントと相談してGI Bleedの可能性が低いのでまあいい、ということになったので、若干ほっとした。

2008年10月9日木曜日

Volume Overload

(著注:本ブログは多分に脚色を含み、詳細は、現実の症例やできごととは対応しない。)

粘土のような浮腫。Pitting edema 5/4(???)。脚はもちろん、腰や背中まで。肺尖でもはっきりとcrackleが聞こえる。

お・そ・ろ・し・や

2008年10月6日月曜日

Russell viper venom time

今日は抗リン脂質抗体症候群の話があった。

Russell viperという毒蛇の毒液はある凝固因子を活性化するのだが、ある種の抗燐脂質抗体があると、この凝固反応が遅延される。よって、この蛇から採取した毒液が、dRVVTという検査に用いられる。

その話をしている先生がHarry PotterのSnape先生のような髪型であることも相俟って、なんだかHarry Potterのような気分になった。

2008年10月5日日曜日

Litigious zone

胸部X線の、心臓の上の中心部から肺尖にかけては、小さなnoduleを見落としやすく、よって胸部X線のlitigious zone(訴訟部位)というらしい。

2008年10月4日土曜日

If you hear it, it's above grade 3...

Medical schoolの3年生に聞き取れるmurmurは、必ずgrade 3以上なのだそうだ。だから、カルテに2/6などと書いてはいけない...

Pain Syndromes and Psychoses

Both "frontal" syndromes with fixation/perseveration on otherwise unremarkable stimuli. Relief with psychphysically designed distraction measures.

治る病気とConsumptionと(追)

追、この患者、まだよくわかっていないらしい。

発表した患者担当の4年生によると、それはそうだよ、W先生はrheumatologistだから、SLEになるに決まっているでしょ。いろいろな科のconsultをとっているけれども、どの科もだいたい、その科の疾患が濃厚、ということになるわけで、だって。Specialistはどうしても、視界が狭まってしまうのだろうか。

Multisystemic Diseases

今朝のmedical studentの症例検討会は、おそらくWegener granulomatosisが濃厚、ということに。で、取り仕切っている先生が面白いことをいっていた。

曰く、USMLEやshelf試験は、どの臓器が何%、という出題基準が細かく決まっているので、複数の臓器がかかわってくる疾患が好まれるのだ、と。Wegenerとか、SLEとかはだから特に、好まれるのだ、と。一問で、複数のノルマを満たせるらしい。まあ、いわれてみれば当たり前だが、この先生はrheumatologistなので、ほんのちょっと、眉唾。

2008年10月1日水曜日

煉瓦がひとつずつ...

(著注:本ブログは多分に脚色を含み、詳細は、現実の症例やできごととは対応しない。)

脳・肝臓・骨、癌はもう、体中に巣食っている。「体の煉瓦がひとつずつ崩れていく気がする...でも米国市民になったばかりなので、オバマに投票するのが楽しみでしょうがない。」

今日朝のpreroundで形どおり呼吸音などを聞いていたら、「無視してようと思って、誰にも言わなかったんだけれどね」と、頸部リンパ腺が腫れていることを明かされた。「治してくれるかしら?」

そんなこといっても、元も子もないことは、僕も、その患者さんも、周知の上。暫く考えた挙句、苦し紛れに「今、感染症がないかどうか検査で調べているので、もしもそれだったら、抗生剤で腫れは引くかもしれませんよ。」主訴と関連して、何種類かの培養なども出してあるから、うそではない。本音でもないことは、僕も、その患者さんも、周知の上だと思う。体中のリンパ節にも、きっと、癌が巣食っている可能性は、高い。

こんなときに、「なんて恐ろしい生業に足を突っ込んでしまったのだ」と、感じる。もう20年以上も学校教育を受けて、ここまで辿り着いたのだ。患者さんはまさに、生死を、ともに分かち合ってくれている。それでいて、「研究のほうが楽しいもんね~!」なんていうのが、許されるのだろうか。