2010年4月18日日曜日

Status Hispanicus

癲癇が続くこと(狭義では30分以上)を、Status epilepticusという。それに模して、ヒスパニック患者にみられる大げさな痛み反応をいうのが、表題の卑語。「アイ・ヤイ・ヤイ」症候群(これはスペイン語?の痛みの叫び声)とも呼ばれる。

まあstereotypeではあるのだが、一般に、ヒスパニックの患者は痛覚の閾値が低いとされる。経験の限りでは、一理くらいはありそうだ。もちろん、それで例えばヒスパニック患者の急性腹症に対して多寡をくくるのは愚かかつ危険なのだが。脳神経科学的にいって、この現象、どこまでがorganic(たとえば痛覚レセプタの遺伝型)なのか、どこまでがpsychosocioculturalなのかは、おそらく明らかではないと思われる。いずれにしても、今日の救急部は、アイアイアイが響き渡っていた。

まあ、痛みの問診は基礎中の基礎でPQRST(P:provocative/palliative factors憎悪・緩和、Q:quality、R:region/radiation部位・広がり、S:severity、T:timing)など教科書的なやり方はいろいろあるが、結局はどうやらパタン認識で、腹膜っぽいとか、心筋梗塞っぽいとか、胆嚢っぽいとか、そのパタンによって問診と、それを書き留めるキーワードも少しずつ調整して使い分けるのがコツのようだ。すべてについてPQRSTなんていう人はいない。

中でもseverityとかについては、問診してもあまり意味がないようだ。というのも、通常は、0(無痛)~10(一生で一番ひどい痛み)、という数字を訊いたりするが、10といって平気な顔をして座っている患者もあれば、腎臓結石の閉塞性腎盂炎で冷や汗をたらしながら4とか言う人だっていた。とくに、オピオイドが好きになってしまった患者さんとかは、そこらへんを上手く操作しようとしたりもする。まあ、「5から9の間を、行ったりきたりする」、とか、「先週はずっと5くらいだったのに今日から突然10ですよ」とか、痛みの持続性・トラジェクトリを知る上では、使えるのかもしれない。

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