2008年8月23日土曜日

海外医学生のAway Rotation

アメリカのmedical schoolの最終学年(4年)は通常、内科のassistant internship(subinternship、研修医の予行演習のようなもの)1ヶ月などといったごく少数の必修研修を除いては、選択実習となる。この間、全米各国のmedical schoolに出て行って、1ヶ月単位のaway rotationをすることが盛んだ。多くの場合、これは研修でマッチしたい病院に出向いてのオーディションも兼ねていたりする。

アメリカ国内でのこうしたaway rotationはシステムがそろっていて、比較的簡単にできるし、全米メディカルスクール協会(AAMC)の内規で、費用も$100(1万円)程度である。ところが、海外からとなると、とたんに難しい。公式には海外学生を受け入れない学校も多く、受け入れる学校でも$2000以上の月謝をとったりする。



ドイツの友人に頼まれて、ちょっとそこら辺の事情を調べた。かれは、$2000(しかももちろんその上に、旅費と滞在費が重なる)はちょっと無理なようで、何とかならないか、と。

調べたところによると、この$2000は大部分がmalpractice insurance(医療過誤保険)代に充てられるようだ。臨床に関わる医学生だって医療過誤訴訟の被告となりうる。別段責任の重さにかかわらず、もしも金持ちだったりして医療過誤弁護士に目をつけられたら、いくらでも、医療過誤の訴訟の被告となりうるのだ。米国内留学の場合は、AAMCの申し合わせで、基本的には、在学のメディカルスクールが過誤保険を準備することになっているため、費用も安い。

でドイツの友人に話を戻すと、彼は英語もほぼ完璧だし、ドイツの学校の過誤保険と追加保険で海外もカバーされているというので、場合によっては何かうまくアレンジできるかもしれない。ドイツでも世話になった悪友なので、もしも探ってみたいというのなら、うちの大学だったら僕でも学長陣や事務方に掛け合ったりはできる。もしきたら、アメリカのまずいビールを飲みながらまたあることないこと語り明かすことになるだろう。

で、アメリカのシステムでうまく融通を利かせるこつを伝授した。まずはコネが重要。必ずしも強力なコネでなくても、地元の教授にお願いして、行きたい先の知り合いに一言入れてもらうだけでも違うと考えられる。この根回しによって、医学部の事務は無碍には握りつぶせなくなる。その上で、その○○先生とコンタクトをとっていることと、さらに過誤保険が不要であることを明示した上で、願書と履歴書を送付すべきであろう。

公式には海外学生を受け入れない、という学校でも、○○先生とコンタクトをとっていることと、過誤保険が不要であることを明示して、英語力の証明となる材料とともに履歴書を送付して問い合わせたら、閉じた扉が開く可能性もないわけではない。ドイツや日本では絶対にそういう融通は利かないが、アメリカというのは、そういう社会なのである。



日本の医学生の場合は、英語力と過誤保険の両方が問題となるため、またおそらく5,6年生のスケジュールが欧米各国のように融通の利く臨床ブロックではなく時期的にも難しく、だから学校で組織してもらった海外実習以外というのは、相当難易度の高い離れ業かもしれない。

参考リンク
AAMCの学外実習データベース

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