今朝は研修医向けのMRI物理学の講義につきあわされた。講義をしたその指導医、おおよその仕組みはわかっているようでいて、よく聞いていると相当いい加減な部分がある。かくいう僕とて、別にMRを使って博士研究をしたわけではないし、物理とかは必ずしも得意ではないのだが、脳科学においては現在MRによる脳血液酸素測定が過剰に幅をきかせているため、博士課程でちょっとは勉強せざるを得なかった。
まあもちろん、比喩的で大雑把な理解でも、臨床現場においてはさして困ることはないのだろうけれども、こういうことがあると、ちょっと怖くなる。僕の理解のとうてい及ばない分野においても、きっと出鱈目な科学もどきがまかり通っている部分は、多いのではないだろうか。
だから結局、医学の本質は、科学とは縁遠いのではないのではないかと思う。もちろん、科学的な「説明」がついていた方が、いろいろな細かい臨床の手順を暗記しやすいことは間違いないが、結局は手順を暗記することが目的で、科学的な本質は、それ自身においては意味をなさないのではないか。高度かつファジーなheuristicこそが医学の本質で、病人が目の前にいたときに何をすればいいかという方針さえ立てば、あとは、実をいうとどうでもよいのではないか。
日常生活では、地球を平たいと考えた方が都合がよい。医学でも、「実際に何か手を打たなければならない」という要請に従って、科学を単純化・歪曲・誇大解釈する気質があるように思われてならない。でもそのつもりで地球の際を見つけようとしたりすると、時々、馬鹿を見ることもやむを得ないのか。
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