Dr. Bruce R. Ransom(University of Washington大学神経内科教授・学科長)
曰く。Clinician scientistというのは、不治の病。Scienceとmedicineと、毎日のようにどちらが楽しいか決めかねて、一生迷い続ける道なんだ。研究室に出るとやっぱりscienceはいいし、臨床に出るとそれはそれでかけがえのない生き甲斐を与えてくれる。だから迷い続けるけれど、どう考えたって、神経内科の研究医ほどいい商売はない。
そして、君らの時代は神経内科の黄金時代。徐々に精神科の領域も脳疾患として取り扱うことができるようになり、そちらの方面にも合流して神経内科は活躍している。と同時にしかし、神経内科のclinician scientistは高齢化がはなはだしく、これから減少傾向。よって君らは、大いに歓待される立場にあるのだ。NIHでもこれは重要な課題のひとつで、たとえば科研費から落とせるclinician scientistの公定給は、PhDの給与に毛が生えた程度の現行から、臨床家なみに引き上げて、臨床と基礎をつなぐ研究者をひきつけようとする動きなどがある。
成功の秘訣
- よいmentorを見つける
- よい共同研究者を見つける
- 論文・NIH科研費・財団科研費・奨学金。Write often, write well(多く書け、そして上手く書け)。
- Gentleにだが、自己アピールを欠かさない
- くだらない学部政治と距離を置け。君らはeliteなのだから、素知らぬ顔で仙人のようにしていても大丈夫なのだ。
- Have fun(Have funすることを忘れないように)
Dr. John W. Griffin(Johns Hopkins大学神経内科教授)
いわく、研究のテクニックがscienceを支配している時代は終わった。自分の時代は、ある実験手法を習得したらそれで一生、研究者として食っていけた。その時代はPhDだけで実験の腕を磨くことにすべての時間を費やせる人たちに比べ、MDのトレーニングもうけたclinician scientistは、時間的ロスから、ハンデすらあった。
でもいまはたくさんの実験手法が成熟期に達しているから、それを生物学的・病理学的な問題に対して自在に駆使するscienceが必要だ。そして、そのスタイルのサイエンスは、clinician scientistの博識と経験を必要としている...
言わんとすることはわからなくもないが、比較的かたぎの実験屋を目指す僕としては、むしろ、いろいろな実験手法を自在に駆使するためには、それぞれについて習得しなければいけないから、さらにハードルが高いのではないか?と思う。オフィスに鎮座して実験室には出ずに、実験屋のポスドクたちをこき使う、そんな偉いタイプの頭でっかちな「clinician scientist」にはなりたくない。そこからは面白いストーリーはたくさん出てくるかもしれないが、50年後も教科書に載っているような研究はできまい。
そのほかメモ
- Neurocritical care(集中治療室)などは、現在麻酔科が手を引きつつあって、神経内科が入ってきている。だから、神経内科として行えるタイプの医療は広がる一方で、ますます面白い。
- 人生設計を考えると、奥さんの収入が多ければ多いほどよい。
- 君らは赤いカーペットを歩いている。Push for what you need。必要なものはきっと、どこかから出てくる。
- Residencyを耐え抜いたら、あとは何でもできる。You can do everything, but not at the same time。
- Residencyの先を選ぶにあたっては、まずは現在そこで研修しているresidentたちとのcultural fitを見るべきだ。そして、著名だが落ち目のところよりも、昇り調子のところを選べ。大学の医師たちは現在のランキングばかりに目を取られて、そこら辺が見えていないことも多いので、アドバイスを受けるときはそこらへん要注意。
- 時は金なり
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