2009年2月14日土曜日

Presentation

小児感染症科。Attending3人だけの小さな部門だが、患者数もコンサルト数も少ないだけに丁寧に診ることができて、attendingもみんなとても教育熱心で楽しいローテーションであった。

で、最後にプレゼンテーションをしろというから、PANDASという、連鎖球菌咽頭炎(あるいは皮膚感染)後に起きる自己免疫疾患としての、痙攣みたいなの(tic)について発表した。10年くらい前にとてもはやったテーマだが、機序(と現象の信憑性すら)なかなかはっきりしないため、最近はちょっと下火の模様。

で都合のよいことに、僕自身の脳研究の生涯テーマ、神経細胞の中間ネットワークレベルでの集合活動を考える上で、とても興味深い。将来できのいい医学生が研究室に来たら、このネタで共同研究をしたいものだ。それまでに、文献を広く下読みしておかなくてはならない。第一チックみたいのが、齧歯類で本当に起きるかどうかすら、実をいうと疑わしい。人間で固有に発達した大脳による中脳以下の制御系統の疾患とみる節があるが、そうだとしたら、猿ですら、大脳によって本能を抑制することは実をいうと人間ほどにはないのだ。



まあいずれにせよ、「大脳の疾患の多くは、実をいうと感染症と絡んだ自己免疫疾患の要素があるかもしれない」というsubtextのプレゼンテーションをしたら、部長先生が最後に、「うん、神経内科も精神科も、全部、実をいうと感染症だ、っておはなしね。おもしろいおもしろい。」と、的確に楽しんでもらえたようで、何より。

(もしも内分泌を回っていたら、きっと、精神疾患はすべて内分泌疾患だ、という話をしていたかもしれない。その意味では、ややintellectual prostitutionの面もあるが、まあ、こんな法螺の一つも吹けなければ、実験をさぼって医学の勉強をしている甲斐がない、というものだ。)

まあ、嘘ばかりではない。実をいうとアルツハイマーだって、スピロヘータの感染巣が核になってプラークが形成される、という、昔からfloating aroundしているお話もあるし、そのほかだって。しかも、神経内科系・精神科系の慢性疾患の罹患率は長期的な上下や地域的なばらつきが激しいが、それは社会や気候の変化・製薬会社の陰謀にだけ、帰着できるものとは限らない。たとえば予防摂取率の上下によって自己免疫疾患系神経症の罹患率が変化している、なんていう疫学結果がもしも出せたとしたら、疫学だけだってノーベル賞級である。

で小児科だからがんばって、カラフルなパワーポイントの雛形をつかったのだが、ある先生に言われたことは、「君はまじめな学生だから、無理してクレヨンとかそういう馬鹿みたいなことをしなくても、いいんじゃない?みんなそういう風にしているのは分かるし、きっと君は君でそういう風に頑張ってみたんだろうけれど、まあ子供だましならそれもしょうがないけれどね、学者は学者なりに胸を張って中身の勝負をすべきだと思うよ。」

おっしゃるとおり。

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