2008年11月6日木曜日

胸部X線写真の左右差

最新の単純X線写真は解像度が恐ろしいほど高い。筋肉や靱帯や、小腸のループまではっきりと見えてしまったりもする。一つには高解像度デジタルモニターでcontrast, brightness, zoomなどを自在に調節できる、というのもあるのだろうけれども、デジタルカセットや放射線源そのものも、少量の放射線でくっきりとした写真が撮れるよう、技術革新が進んでいるのだという。

で、こういう技術革新でわかることとして、正しく撮影されたCXRでは、lung markingは一般にいって男性の場合右、女性の場合は左の方が明るいらしい。右利きの男性は通常、右の大胸筋のほうが大きく、よって、右がより白く写るのだという。右利きの女性は通常左の乳房のほうが大きく、よって、左がより白く写るのだという。確かに、筋力トレーニングに凝っている男性患者で、表示設定によっては一瞬右側の浸潤と読みたくなるくらい左右差のある症例をみた。(そういえば以前も、大学病院のローテンションで胸部X線のミニ講義の際、右側のmastectomyによって左側全体の方が格段に白く、まるで教科書のような肺炎に見えるフィルムを読まされたが、そこに居合わせた10人くらいの学生で、右のbreast shadowがないことに気づいたものは、一人もいなかった。)

で、大胸筋・女房の左右差について教えてくれた放射線科医の老暈医は、女性の乳房左右差についてのdirty jokeをいっていたが、公の場ゆえここでは割愛する。いずれにせよ、優れた臨床家は、教科書や機械主義的な人体観には収まりきれないようなこういった人体生物学を、有していたりするようだ。

あと、そのおじいさんによると、academic medical centerの放射線科医は重病人の画像ばかり読んでいるため、ある意味では全体観が偏ってくるのではないか、という。彼によると、暈みたいなところにいると健康な画像をたくさん読むので、ある意味では画像に対する感覚が研ぎ澄まされるのではないか、という。

1 件のコメント:

  1. 利き腕によって肺野に左右差があるなんて、知りませんでした。勉強になりました。今度、胸部単純X線画像を見るときに注意してみてみたいと思います。

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