2009年4月6日月曜日

6SE syndrome

関連病院の6SE病棟(仮)。今やほとんどの大病院にある、デラックスホテル病室の病棟である。それとは知らずに回診前の準備(preround)でいったら、いきなり絨毯にシャンデリアである。ネクタイではなくscrubs(手術着)であるのが、恥ずかしい感じ。

まあ、医療なんていうのはこの国ではビジネスに過ぎないから、こういうのも必要である。貧乏な患者なんて、学生や研修医のトレーニング(つまり病院の評判の維持)には好適であっても、その効用以上の経済価値は、はっきり言って、ない。心カテとかinterventional radiologyとか、限られた高収益procedureが必要ない患者は、結構まともな健康保険の患者でも、赤字すれすれの入院だ。だって、保険屋がちゃんと請求額を病院に払わないのだから。だから、ホテルみたいな副収入源が必要である、そういう経済システムがしかれているのだ。



で、この病棟。あまりに快適すぎて、患者が長居してしまいすぎるのだそうだ。それを6SE(仮) syndromeと呼ぶらしい。

先月一般外科チームに入院していた患者なんかは、長居しすぎて、肺塞栓を起こしたという。今チームで持っているデラックスお客様患者様は、一生懸命退院させようとチーム一丸となってがんばっているのだが、なんやかんやいって、出て行かない。病院なんていくら居心地がよくたって、必要のない人にとっては百害あって一利なし、ということが、わからないらしい。

あと、金持ちの患者にはどうしても、医療チームの方がいいなりになるというのも、弊害だ。たとえば血栓防止のSCD (sequential compression device、ふくらはぎマッサージ風船のようなもの)を付けろとか、ふつうの患者には結構きつく言いつけるわけだが、そういう点でもお客様患者には逆に行き届かないことだってあろう。



貧乏人が長期入院すると、とたんにケース・マネージャなる人たちが出てきて朝から晩まで退院させろさせろと煩いのだが、この6SWでは、全く不要な入院でもうんともすんとも言わない。これこそ、アメリカという社会の真の姿である。

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