「Kenta, you're going to be a really good doctor.」
もう3週間も一緒に働いている超熟練のオペ看護婦さん。細かいことに実に細かく気が回る人で、人当たりもよいので、患者さんには大人気。ルールには厳しく、この人のオペ室では患者の取り違えとか、機械の体内への置き忘れなどは当然のこと、些細な器具の整備不良なども絶対に起こりえない。でいつもの通り、麻酔から覚めつつある患者さんの世話を手伝っていたら、↑のように、いわれた。
直接のきっかけは、患者さんの足に機械を取り付ける前に一言、「足に○○をつけますよ」と一言声を掛けただけなのだが。曰く、「もっとずっと慣れたレジデントでもね、寝覚めの意識が朦朧としている患者さんにもきちんと声をかけられる人は、ほとんどいないですよ」だそうだ。まあ、種を明かせば、その看護婦さんのスタイルをまねている部分は多分にあるのだが。
でも、もう3週間もあのオペ室で働いているので、総合評価も含んでいるというのはまあ、間違いない。そのオペ看、必要とあれば容赦なく厳しい人で、右に左に愛想を振りまくような人ではない。しかもきっと30年以上にわたるキャリアで、想像を絶する人数の指導医・研修医・学生を見てきている人である。優秀な看護師ほど、医師~学生をよく見ているし、見る目は厳しい。そういう人にある程度評価されると、言葉の重みというかありがたみというか、付随する責任感が段違いである。「でも、実をいうと研究が本命なんですぅ~。ボク、doctorにはならないんですぅ~」なんて、口が裂けても、いえない。
今週でこのローテーションも終わりだと知るや、「あら先生、Kentaはこのローテーション、不可ということにしましょう、そしたらずっとうちに引き留められますわ。」などと、指導医と冗談を交わす。ありがたいというか、騙しているようで申し訳ない。実をいうと医学生は仮の姿、心は研究室から一歩も出ていないのに。
帰りの車中、頭の中で繰り返し考えたが、研究をきちんとやることと臨床をきちんとやることとは、やっぱり僕には、同時に両立できるキャリアではない。そしてそろそろ最終選択を迫られる時限だが、やっぱり、研究が、本命だ。長年の教育と、数え切れない人たちの教え・努力・好意を踏みにじったうえでも、研究が、本命だ。
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